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メルマガ:46th 「富裕層の夢と現実:仕組債の終焉がもたらす未来」

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【目次】

1.今週の一言/富裕層の夢

2.モノリスの活動日記/仕組債時代の終焉

3.富裕層の公然の秘密/任天堂がファミリーオフィスを持つ?


1. 今週の一言

こんにちは。門垣です。
今週前半は、大阪と兵庫出張、後半は東京に戻り、ひたすらWealth chatサービスのフィードバックをいただく週でした。

最近、経営者や富裕層のみなさまに、必ず「将来の夢」を聞くことにしています。9割が50代以上の方です。

不思議なことに、50%以上の人が、「旅行に行きたいです」と回答します。

なぜでしょうね。

お金もあって、行きたいという衝動に駆られたらいつでもいけるはずなのに…。

逆に20~40代は仕事に追われ、比較的余裕がなかったからなのでしょうか。今週は、仕事で富裕層向けの会員制のホテルの視察に行ってくるので、そこで理由を探したいなぁ~と思った一週間でした。

経営者・富裕層のための、コンシェルジュサービス WEALTH CHAT
運用や経済について相談できるだけでなく、毎週モノリスから、金融リテラシーを向上するためのレポート、さらにラグジュアリー商品の豆知識や投資情報まで。人生を豊かに。

2. モノリスの活動日記

先日、日経新聞より、

「仕組債、投資初心者は販売対象外」との報道がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64069940V00C22A9EE9000/

ポイントは、

国債より利回りが高いが、リスクもかなり大きい仕組債の販売ルールを強化

元々プロ機関投資家のために開発された商品だが、個人投資家への販売が盛んになり、商品のリスク説明も難しいため、トラブルが相次いでいる

今後は「退職金運用」や「口座を開設した人」等の投資初心者に対して、販売規制を行う

です。これまでは、証券会社は、手数料が価格に内包されており、お客様にみえずらい仕組債を、主要商品として、販売していました。仕組み債は、簡単にいうと、デリバティブ(派生商品)が含まれている債券です。

仕組債って何? 知らない!って方は、ネットで色々な記事が出ているので、調べてみてください。例https://life.mattoco.jp/post/2022071101.html

しかしながら、昨今は、お客様とのトラブルが相次ぎ、金融庁からの指導が入ったりすることから、ある一定の資産を保有している人のみ対象にしたり、そもそも販売禁止にしたり、各社ルール付けを行っている最中です。
皆様も、過去に証券会社から、仕組債の販売を受けたことがあると思います。もちろん、うまくいけばリターンが大きくなる商品ですが、商品の説明を受けてもよく理解できずに、担当者との信頼で、購入するケースがあったかと思います。

私も、Bloomberg時代に、仕組債を開発するシステムを証券会社に販売しておりました。全世界を見渡しても、日本の証券会社だけが、個人向けに、仕組債の販売に力をいれていました。理由としては、金融機関と個人投資家の間で情報格差が大きい日本では、商品が複雑で、不透明なことを武器に、圧倒的な手数料を獲得できる、儲ける商品だったからです。

Bloombergの海外の同僚からは、「なんで日本はそんなに仕組債が流行っているんだ」と、聞かれたくらいでした。

これは、やはり、日本は販売手数料のビジネスモデル、海外はお客様の資産の増減に応じたアドバイスに連動した手数料モデルの違いから生まれたものだと思います。

モノリスでは、仕組債の価格計算や、商品の妥当性の説明をする支援ができるので、もし証券会社から提案を受けた際は、お気軽にご相談ください。

3. 富裕層の公然の秘密/任天堂がファミリーオフィスを持つ理由

<ファミリーオフィスが上場企業を買収する!?>


富裕層の皆様が資産管理会社として設立するファミリーオフィス。最近、あるファミリーオフィスが上場企業を買収するための株式公開買付を開始すると話題になっています。

なぜファミリーオフィスが上場企業を買収するのか、またファンドや事業会社との違いは何か。買収の対象となった企業はどのように反応するのかを書いてみました。

【概略】
 今年3月、東洋建設の間接的な大株主であるインフロニア・ホールディングスが、東洋建設に対して770円でTOBを発表しました。東洋建設は当初本TOBに賛同し、友好的な買収になりそうでした。


 しかし、その後株価は800円台まで上昇。TOB価格を超えてしまいました。そのため、東洋建設はインフロニアHDに対して価格引き上げを求めましたが、インフロニアHDは拒否。


 同じタイミングで任天堂創業家の資産管理会社であるYamauchi No.10 Family Office(YFO)が1,000円でのTOBを検討していることが分かりました。結果的にインフロニアHDのTOBは不成立となりました。


 現在はYFOと東洋建設の間で協議が続いており、9月下旬を目途に買付開始予定になっています。

【YFOはなぜ上場企業を買収するのか】


 YFOは、任天堂株式会社の創業家一族である山内家を背景に持つファミリーオフィスです。

一般的な資産管理会社とは異なり、山内家が紡いできた挑戦の哲学を受け継ぎ、次代のイノベーションを起こしていくことを目的として、2020年に設立されています。その投資可能資金は1000億円規模といわれており、人類の未来を大きく良い方向へ動かし、次代の社会に変革をもたらす事業へ投資していく方針を掲げます。


 YFOは東洋建設が日本の海洋土木業界において業界3位であり、その人材、技術、ノウハウにより更に飛躍できる企業であるとみているため、買収を検討しているようで、基本的にYFOはExitを想定せず、長期的に東洋建設独力での成長をサポートしていく考えのようです。


 山内家の投資哲学に沿った投資を実行できそうな投資対象が東洋建設だったようですね。

【ファンドや事業会社とファミリーオフィスの違い】


 ファミリーオフィスは性質上、事業会社やファンドと異なり、多くのステークホルダー(利害関係者)を抱えておらず、かつ一定期間で利益を確定しなければならないという制限もありません。

そのため、投資期間が限定されておらず、投資哲学に基づき超長期的な成長・企業価値向上を目指した関係を維持することが可能です。


 一方、アクティビストファンドには企業年金や大学等といった大手機関投資家が資金を拠出していますし、事業会社は多くの株主が存在します。そのため、どうしても短期志向に陥ってしまう点が、ファミリーオフィスとは大きく異なります。


 YFOは他人から資金を預かって運用しているのではなく、自分の手金で投資をしています。いつまでにいくらのリターンを出さなければいけないというような圧力はかかりません。通常、出口戦略を想定しない買収ファンドはありませんが、YFOなら誰にも文句は言われない。

これがファミリーオフィス最大の特徴といえるでしょう。仮に損をしても出資者に迷惑をかけるわけでもなく、自業自得と割り切ってしまえばいいので、1株あたり1,000円という強気の価格提示ができるのは、ファミリーオフィスにしかできない芸当と言って良いかもしれませんね。

【東洋建設はTOBにどのように対処するのか】


 率直に言って、東洋建設からすると、YFOからのTOB提案は非常に拒否し辛いと思います。


 その理由は1,000円というTOB価格です。2007年以来、東洋建設の株価は一度も1,000円に到達したことはありません。

その条件を東洋建設がはねつけた場合、既存株主が1,000円で株式を売却する機会を奪ってしまうことになるのです。つまり、東洋建設がTOBに反対するには、既存株主が短期的に1,000円以上のリターンを実現できるようなシナリオを示す必要があります。果たして、その合理的説明が東洋建設にはできるでしょうか。


 ファミリーオフィスであるからこそ強気の価格提示ができる。買収対象会社からすると、これは今までに現れなかったアクティビストの形であり、対処に困る存在とも言えそうです。


 TOBの行方、そしてその後のYFOと東洋建設の関係性や業績に注目していきたいと思います。

今週もよろしくお願いします。

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