メルマガ:204th 酔わない時代への挑戦 アルコール離れと広がる健康志向
【目次】
今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
先週は飲食関係の方々との打ち合わせが多く、世界中で進む「若者のアルコール離れ」について話す機会がありました。特にお酒を製造・販売する企業は、どこも苦戦している印象です。
日本酒の消費量は1973年をピークに減少。
生産現場では人手も減り、消費者は海外のウィスキーやワインへと流れたかと思えば、実はワインの消費量も年3%ほど落ち込むなど、業界全体が打撃を受けています。都内でさえも、バーテンダーの採用も難しくなっており、サプライチェーン全体で人手不足が生じていますね。
ワインに関しては、ぶどうの樹を何十年も育て、天候を読みながら生産し、巨額の設備投資をしても、格付けやブランド力が伴わなければ単価は上がらず、利益率は低下。結果として体力勝負になり、破産に追い込まれるシャトーも少なくありません。一方で、格式あるワイナリーが営業利益率50%を叩き出すなど、まさに二極化が進む戦場です。
加えて、トランプ政権の関税強化によってワイン流通の流動性も低下し、特にフランスは主要輸出先がアメリカであるため、日本酒とは異なる要因で深刻な打撃を受けています。一方のアメリカでは、ナパ・バレーを中心に高級ワインの生産が拡大しており、他の製造業と同様に“国内回帰”の動きが見られます。
余談ですが、先日上海を訪れた際に中華料理と中国ワインを合わせてみたところ、驚くほどおいしくなっていました。
中国ワインの品質は年々向上しており、エネルギーや半導体、造船、AI、ドローンといったインフラ産業に加え、「食」の分野でも成長が加速しています。習近平氏が、2015年に発表したハイテク国家戦略【中国製造2025】から10年が経過しますが、本当に恐るべしスピードで技術が発展していますね。
話を戻しますが、今、世界はこれまでにないスピードで健康志向が広がっています。会食でもノンアルコールドリンクやソフトドリンクを選ぶ人が増えており、高額なお酒に対して「飲む理由」が薄れているのが現実です。
私自身も、最近は最初の1〜2杯だけお酒にして、その後はお茶に切り替えることが多いです。こうした潮流の中で、栄養ドリンクや次世代ヘルステック分野に投資を検討するファミリーも増加。「120歳まで生きる時代」をテーマに、世界中が“長寿”をめぐる挑戦に取り組んでいるわけです。アルコール業界にとっては逆風の時代ですね。
そんな中でも、各社は新しい発想で挑戦しています。
先日聞いた話によると、大阪のラグジュアリーバーではアルコールだけを分離する機械を導入し、お酒が飲めない人でもカクテルの味を楽しめるようにしているとか。
また、日本酒の獺祭は三菱重工と協業し、宇宙用の酒造装置を大型ロケット「H3」7号機に搭載。 月面での酒蔵建設を目指しており、未来の人類に向けた先行投資を進めています。 市場が縮小しようとも、需要がゼロにはならない—その執念を感じます。
先週は、そんな中でも特に印象的だったのが、
“Made in Japan”の世界一高価なウォッカを手がけるオーナーとの会食でした。
ウォッカの世界市場規模はおよそ5兆円。
一方で日本酒は数千億円、多くても1兆円規模。日本ではあまり馴染みがないですが、ビジネスとしては非常に大きなマーケットです。
知識不足で知らなかったのですが、ウォッカは小麦やとうもろこし、ぶどうなど、あらゆる農産物から作れるとのこと。
この「世界一高いウォッカ」はお米でつくられており、大吟醸並みの精米歩合で仕上げているため、洗練されたスッキリとした味わい。
アマン東京で一杯6,800円、他のホテルでは1万円を超える高価な価格ではありますが、確かに納得の味でした。 香りにお米のニュアンスがあり、日本酒のような感覚で飲めてしまう。度数は40度ですが、スッと入るので油断すると酔いが回る—そんな印象でした。
カクテルにも使えるため、お酒に強くない人でも香りと味を楽しめる。
そして、こうした工夫を重ねながら新しい市場や付加価値を生み出し、
単なるお酒ではなく、ライフスタイルの一部として意味を持たせていく。
それぞれが自分たちの世界観を描きながら挑戦している。
そんなことを感じた一週間でした。
今週もよろしくお願いします。