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メルマガ:191th「分散か集中か ローマとスターウォーズから学ぶ組織論」

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【目次】

  1. 今週の一言/モノリスの活動日記

1.今週の一言/モノリスの活動日記

こんにちは。門垣です。

先週もアジアからゲストが来日し、いくつかのプロジェクトを共に進めていました。

今回のゲストは、13代続く家系の出身。すでに一族のファミリービジネスは売却済みですが、彼自身は経営やガバナンスへの関心が深く、「家業を家族だけで続けるのか、それとも外部を巻き込むべきか」という問いに対して、実体験をもとに問題意識を持っているようでした。

そうした話の延長で、食事中には自然と世界史の話に。
彼が関心を寄せていたのは、ローマ共和国とその後のローマ帝国。約1,000年にわたって続いたこの時代には、国家の設計思想としてのヒントが詰まっている、と。

特に彼が好んで語っていたのは、ローマ共和国における制度設計。

1人に権力を集中させないために、毎年2人の執政官(コンスル)を任命し、任期は1年と短く設定する。権力の暴走を防ぎ、権限のバランスを取る仕組みとして、非常に示唆に富んでいる。

「この思想は、ファミリービジネスの経営にも応用できるのでは?」といった投げかけに、私自身も考えさせられるものがありました。

最近あらためて感じたのが、相続やガバナンスに対する東西のスタンスの違いです。

ヨーロッパのファミリーは、比較的早い段階から子や家族に情報を開示し、資産の構造や移転方針についても、制度として整備されているケースが多い。

それに対して、東アジアでは「親が退く直前まで何も話さない」「誰が何を持っているか家族でさえ知らない」といった状況が、まだまだ珍しくない。

今回のゲストのように、厳格なルールの中で育った人ほど、ローマのように分散と制限を意識的に組み込んだ統治制度に魅力を感じるのかもしれません。 ただ、共和制が理想形かというと、そう単純でもないと、思っています。

ローマ共和国が直面したのは、多様性を尊重するがゆえの利害調整の困難さ。有事の際には意思決定が遅れ、内部では階級闘争が激化。

形式上は民主制であっても、実質的には一部の貴族層が権力を掌握する寡頭制に近い構造だった。
そして、その矛盾を乗り越えるために登場したのがアウグストゥス。

ローマは共和制から帝政へと移行し、集中と統一によって安定を取り戻していきます。

王政 → 共和制 → 帝政というローマの変遷は、「制度には常に功罪がある」という前提を私たちに突きつけます。完璧な体制は存在せず、時代や状況に応じて、どのように進化させていくかが問われ続けてきたと思っています。

日本もまた、戦国時代のような分権の時代を経て、徳川家による統一がなされ、江戸幕府という中央集権的な体制が約260年続きました。そして最終的には大政奉還により政権を天皇に返上。

こちらもまた、長く続いた体制は必ず節目を迎え、時代に応じて形を変えていくという一つの実例です。

こういった構造的な変化は、企業経営の世界にも色濃く表れています。

最近目にした野村アセットマネジメントのデータでは、経営者の出自(創業家、生え抜き、外部、天下り)ごとに企業の株価パフォーマンスが大きく異なるという結果が出ていました。

目覚めよ、日本の創業家 宿願のROE10%超えが4割に
デジタル版「日経ヴェリタス」から

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB185XR0Y5A410C2000000

創業家主導の企業は、株価の水準も成長性も他の属性に比べて明らかに高く、逆に外部や天下りによる経営は、衰退傾向にあるケースが多い。

業種による差はあれど、長期視点や大胆な意思決定、リスクを取る構造といった点で、創業家経営には一定の優位性があると感じます。もちろん、創業家であれば必ずうまくいくわけではありません。 1代目と3代目では視座も志も異なるし、内部に緩みが出ることもある。どの代で繁栄するかもわからないです。

それでも、「誰が決めるのか」「どこに決定権があるのか」が曖昧な組織よりは、一定の構造を持ったガバナンスの方が、再現性のある強さを発揮できるのかもしれません。

ローマ帝国にしても、江戸幕府にしても、長く続いた体制には、最終的に「決断できる構造」が備わっていた。 つまり、分権と集中のバランスをどう設計するか――これは現代にも通じるテーマだと思っています。

そんなことを考えながら、週末はスターウォーズを見返していました。

銀河やロボットと共存するあの世界は、一見するとフィクションですが、よく見ると「制度」や「秩序」といった社会構造の話が、随所に散りばめられています。

共和国と帝国、反乱軍の構図は、まさに歴史の縮図のようでもあります。

そして、最近試したChatGPTの音声機能には、あらためて驚かされました。

抑揚も自然で、もはや“AIと話している”という感覚すら薄れてきている。まさにC-3POが横にいるかのような世界観です。

技術の進化によって、人とロボットが共存する未来は想像の範囲を超えつつあります。

人間とAIが対等に意思決定を行うような時代が来るとすれば、そこで求められるのは、新しい「制度設計」です。

統治や経営のあり方は、どこまでいっても“構造”の問題に帰結する。

その構造をどう描き、誰が意思決定を担うのか。
これは数千年前から続いてきた命題であり、これから先も変わらず向き合い続けるテーマなのだと、あらためて考えさせられた一週間でした。

今週もよろしくお願いします。

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