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メルマガ:189th「100年続く会社が、続かなくなっている」

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【目次】

  1. 今週の一言/モノリスの活動日記

1. 今週の一言/モノリスの活動日記

    こんにちは。門垣です。

    今週は、福岡、大阪、京都へ出張。

    弊社のお客様は東京以西が多く、最近は九州や関西方面での相談が増えてきています。

    エリアごとに産業構造や商習慣、文化の捉え方が異なり、それぞれの特性を知ることは非常に有意義です。なかでも、ファミリービジネスやファミリーオフィスの視点で特に存在感があるのが京都。

    全国の中でも、「伝統を重んじる街」といえば、多くの人が京都を思い浮かべるのではないでしょうか。

    個人的には、京都と九州は似ており、歴史や文化が深く、独立国家といいますか、その地に深く根ざしながら、ビジネスを展開させているイメージです。一方で、九州はアジアの玄関口であることから、京都よりは少し外交的と言いますか(県にもよりますが)、守る文化が少しだけ京都の方が強い気がします。大阪に関しては、個の世界観が強く、生存のためには、なんでもする外交的な人や企業が多い、いわゆる商売の街。と思っています。

    さて、帝国データバンクの調査によると、2024年9月時点で創業100年以上の老舗企業は全国に4万5,284社あり、その中でも京都の老舗出現率は5.35%で全国トップ。企業数としても1,000社を超えます。

    こうした背景もあり、京都のファミリーと話すと「どのようにビジネスや文化を継承していくか」という話題がよく出ます。プリンシパル(家訓)やルールが存在している家も多く、良くも悪くも“昔ながら”の考え方が色濃く残っています。

    年功序列の組織

    長男が継ぐ文化

    外部人材の排除

    こういった考えが受け継がれてきたことが、企業の長寿を支えてきた一因ともいえますが、必ずしもそれだけでは現代の環境に適応できなくなっているのも事実です。

    東京商工リサーチ京都支店の調査によると、2024年に京都府内で休廃業・解散した企業は前年比49.1%増の1,196件で過去最多。これまで最多だった2021年(847件)を大きく上回りました。

    https://www.yomiuri.co.jp/local/kyoto/news/20250212-OYTNT50108

    特にサービス業(飲食・宿泊など)や製造業、建設業での件数が増加しており、経営者の年齢は70代以上が全体の7割超。後継者問題が大きな要因となっていることがわかります。

    一方で、出生率も全国平均を下回る状況です。

    2024年の全国の合計特殊出生率は1.15で過去最低。京都府はさらに低い1.05でした。関西圏の中でも特に出生率が低く、人口構成の将来像にも不安が残ります。

    関西6府県、24年の出生率低下 京都府1.05・大阪府1.14 6月4日2025年

    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF028JS0S5A600C2000000

    学生の街という側面もあり、若い世代は大学卒業後に大阪や東京へ就職し、京都には定着しづらい傾向も続いています。

    また、観光地としての側面が強まる中で、街中では牛カツ定食が8,000円というような、インバウンド需要に寄せた価格設定も目立つようになってきました。伝統と観光のバランスが揺れている印象で、生存戦略の一環なのでしょうか。

    一方で、次世代の経営者層、特に30~40代の方々は、自らの家業や地域の現状に危機感を持っている方が多いと感じました。育った環境を理解しながらも、外の世界を見てきた彼らは「このままでは続かない」という問題意識を強く持っており、上の世代と協調しながらも、進化することの重要性を訴える。しかしながら、ルールや守りを重んじる親世代との対立が生じ、その結果、事業が承継されずに終わっていく。

    「守るべきもの」と「変えるべきもの」の線引きをどこで行うか。

    簡単ではありませんが、時代に合わせて動き出そうとするファミリーや企業も少しずつ増えてきている印象です。

    企業としての存続、ファミリーとしての継承。
    京都という土地では、今まさにその境目に立っているように感じた一週間でした。

    今週もよろしくお願いいたします。

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