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メルマガ:185th 「台湾との静かな共鳴と、日本企業の構造的課題」

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【目次】

  1. 今週の一言/モノリスの活動日記

1.今週の一言/モノリスの活動日記

こんにちは。門垣です。

今週は、台湾のファミリーが来日し、東京と福岡で数日間ご一緒しました。

彼とは約2年前に出会って以来、どちらかが日本や台湾に行く際は会うようにし、仕事だけでなくプライベートでも親しくしています。

私にとって台湾は、距離的にも文化的にも非常に近い存在です。

最近ではさまざまな国のファミリーと仕事をしていますが、日本人を除けば、台湾の方々が最も“感覚が近い”と感じています。

たとえば、言葉にしなくても伝わる空気感。

礼儀正しさと柔らかさが自然に共存する人柄。

そうした雰囲気に、どこか懐かしさや親しみを覚えることが多いのです。

その背景には、日清戦争後の日本による統治を経て、台湾と日本のあいだで共通の価値観が育まれてきたという歴史的な流れがあります。

さらに、インドや中国から伝わった仏教や儒教が両国に根づいていること、そしてどちらも小さな島国であるという地理的共通点を踏まえると、国は異なっていても、思考や感性の土台には多くの共通性があると感じます。

加えて、台湾では多くの人が日本のアニメや漫画を見て育っており、こうしたコンテンツは単なるエンタメにとどまらず、幼少期の思考や感性の形成に深く影響を与えています。

そのため、似たような興味や価値観を共有している場面も多く、実際の仕事でも「ナルトのスタンプ」が送られてくることがあるなど、思わず笑ってしまうような共通感覚に出会うこともしばしばです。

近年の台湾でも、日本と同じように「ウェルネス」や「原点回帰」といった価値観が広がってきているようです。

たとえば、社長室の隣に茶室を設けていたり(これは何千年も前から続く文化かもしれませんが)、自然の中にリトリートスペースを持つといった動きも見られるようになっているとか。

そして、今回驚いたのは、ワインコレクターならぬ「お茶コレクター」が存在することを聞いたことです。世界には、ワインに匹敵する価格帯で取引されるヴィンテージ茶葉があり、茶の世界の奥深さをあらためて感じました。

お茶は中国大陸から台湾や日本へと伝わったとされていますが、それぞれの土地で独自の発展を遂げてきました。

個人的には、台湾では、日常生活の中でバランスや美を保つ存在としてお茶が親しまれている一方で、日本では茶道という形式を通じて、「一期一会」や「侘び寂び」といった精神性や空間美がより強く重視されているように思います。

世界の超富裕層と話す機会があると、こうした歴史や文化、思想に話題になることが多いです。そのたびに、日本人でありながら自国のことをまだまだ知らない自分に気づき、無知を痛感する今日この頃です。

一方、伝統を重んじる一方で、都市部でも変化が起きています。

2023年に建設された台北ドームに続き、新北市には大規模なスタジアムが建設中で、スポーツだけでなく音楽やカルチャーの発信地となっています。今年のAsia Artist Awardは台湾で開催されるとか。

都市と自然、経済と文化が融合する流れが、今まさに起きているように感じました。

そうした話を、美味しい日本茶をカジュアルな形式で飲みながら、線香の香りを楽しみながら、
静かな空間で語り合う時間はとても心に残りました。

あらためて、経済やビジネスの話だけでなく、価値観を共有できる関係の大切さを実感しました。

さて、彼のファミリーは、ある業種の製造業から事業をスタートし、大型売却を経て、現在は、ファミリーのノウハウやネットワークを活用し、その業種に特化したベンチャーキャピタルファンドの運営や、直接投資を行っています。

投資対象はアジア全域ですが、最近はベトナムやフィリピンなど、人口成長と経済発展が著しい国々に注力をして、拠点も設けているようです。

今回の来日中には、日本の大手上場企業も訪問しました。

最近は、企業の規模にも関わらず、「アジア市場の展開に苦戦している」という声を聞きます。

背景には、日本国内での需要減少や成長鈍化への危機感があるのでしょう。

特に感じたのは、“海外との架け橋、ゼロイチ”を任せられる人材の不足です。

英語や多言語を話すだけでは不十分で、
現地の文化や価値観を理解し、関係構築から実行までを担える人材が、大企業の中にほとんどいないという現実があります。

その結果、「何をどうすればいいかわからない」と手が止まり、外部のコンサルに任せるものの、思うような成果が出ず、「やっぱり海外展開はやめよう」という結論に至ったり、思うように成長することができず、
M&Aを仕掛け、売上や利益は拡大するものの、果たしてシナジーはあったのか、と疑問が残るケースが多いように感じます。

この点、商社などは、もちろん会社のブランド力もありますが、比較的ヒトとの関係構築や遂行能力が高い人を雇用しているため、開拓力があるのでしょう。

メーカーやブランドにおいては、コンサルティング会社や外部と連携すること自体は悪くないと思いますが、結局、 社内に“対外のコミュニケーションをマネジメントできる人材”がいなければ、どんな協業も長続きしないと私は思います。

準備や人材の欠如によって、戦略を“語る”だけで終わってしまっている企業も多く見られます。

もしそのような人材の正社員での採用が難しいのであれば、外部人材が本気でコミットしたくなるような仕組みや報酬設計が必要だと思っています。

文化を起点に対話を重ねながら、
「日本企業がアジアでどう立ち回るべきか」という
テーマに、今週は深く向き合いました。

今週もよろしくお願いします。

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