メルマガ:180th 「週間モノリス テック全盛時代に“オールド”で勝つ――市場選びと商売の本質」
【目次】
- 今週の一言/モノリスの活動日記
1.今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
スタートアップといえば、AIやインターネットを活用した最先端の分野が主流です。
しかし今週出会った起業家は、あえて“逆張り”の道を選んでいました。
彼は中国出身。若くしてアメリカで起業し、話し方や価値観はすっかりアメリカ人。しかし、中国人という出自や「中国企業」と見なされることで、国際的な関係の中で不利になるケースが多いため、「自分たちはアメリカの会社だ」と強調していました。
一方で、最近の傾向として、特にAIやインターネットの分野においては、アメリカに留学した中国人が、あえて中国本土で起業するケースが増えているそうです。優秀な人材が国内に戻り、世界市場を見据えたプロダクトを作っている。そこには、自国発でグローバルを狙えるという誇りがあるのだと思います。
日本と比べると、留学経験者の数も多く、グローバルな感覚が浸透しており、ビジネスの最初の設計段階から海外展開を前提としている点は非常に印象的でした。以前のメルマガでも紹介した「出海」というテーマを体現しています。そして、上場先も中国や香港ではなくアメリカ市場。彼らにとって自然な選択です。
そんな彼が挑戦しているのが、中古車ビジネスという意外な領域。
アメリカでは、中古車販売のプラットフォームとして、
自動販売機のような形で車を販売した「Carvana」が有名です。
車両評価アルゴリズム、物流最適化、在庫分析、レコメンド機能など、AI技術をフル活用したテック企業。しかしコロナ禍での需要急増を受け、在庫を拡大し、オークション会社を次々と買収。アクセルを踏んだ結果、需要の鈍化と金利上昇が重なり、債務拡大で経営が悪化。破綻へと向かいました。
米中古車販売「Carvana」来年には破産? 急拡大から業績悪化までの顛末をたどる
https://strainer.jp/notes/7706

彼はCarvanaの教訓を生かし、在庫を極力抑えつつ、アナログ営業を重視。特に、通常では価値が下がりやすい大きなダメージを受けた車を安く仕入れ、修理・再生することで付加価値を生み出すビジネスモデルを構築しています。
オフィスはアメリカ、整備工場は経済特区を活かした中国上海、販売先はアフリカ。グローバルに分業された体制。アメリカで事故車を買い、中国で丁寧に整備・アップグレードし、アフリカで販売する。中でもナイジェリアではトップクラスの販売実績を誇っているそうです。もちろんその他の国へも販売。
ナイジェリアの人口は約2.2億人。年に35万台の自動車登録が行われており、日本の500万台と比べると少ないですが、将来性は十分。アフリカ全体では14億人、2050年には25億人に達するとも言われており、その規模の大きさは無視できません。またインターネット普及率も51.0%と言われており、消費者のテクノロジーの活用、その他eコマースマーケットプライスも出現しています。

現地では日本車でいうと、トヨタ車の人気が非常に高く、特にアルファード、ランドクルーザー、プラドなども需要があるのではないかとのこと。信頼性、耐久性、ブランド力が評価されています。
「安く買って、高く売る」という商売の原理原則。
それをテクノロジーと地理的優位性で強化することで、シンプルながらも強いビジネスモデルが出来上がっていました。整備を担う中国の工場のエリアには、テスラ、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、トヨタといった世界の自動車メーカーが進出しており、クオリティの高さとコスト競争力の両立が図られています。
日本では、SBIグループのSBI Africaがナイジェリアへ日本の中古車を輸出しています。
また、ナイジェリアでは、膨大の数の廃車の破棄、不法投棄がされており、採用率が低い状態にあるため、部品の輸出なども行っているようです。
起業において「誰と、いつ始めるか」は重要です。
しかし同じくらい、「どの市場を選ぶか」もまた、成功を左右する要素だと感じました。
これからの成長産業に投資するのか、成熟した産業にイノベーションで挑むのか。
それとも、新しい市場を自ら創り出すのか。
そんなことを考えた一週間でした。
今週もよろしくお願いします。