メルマガ: 89th 「上場=成功時代の終焉、カーライルの戦略、海外進出と株価の関係」
【目次】
1.今週の一言/メッシ、アメリカへ
2. モノリスの活動日記/少しずつ
3.金融コラム/上場=成功時代の終焉
4.経営コラム/海外進出か、日本にいた方がいいのか、株価の関係
1. 今週の一言/
こんにちは。門垣です。
サッカー界のレジェンド「メッシ」が、
仏パリサンジェルマンから
米インテルマイアミに移籍。
先日、初出場をした試合では、
メッシが後半ロスタイムに
フリーキックで決勝点を決め、
まさにドラマのような展開になりました。
さすが、の一言です。
年俸は2.5年でUS 150 million。
さらに
①MLS(米サッカーリーグ)はAPPLET TVと独占契約。APPLEは、サブスク料金の一部をメッシへ支払う
②アディダス社からのグッズ収益をメッシへ支払う
③引退後、アメリカのサッカーチームのクラブオーナーになる権利を取得
するという前代未聞の契約が
交わされたと言われています。
1人の選手の移籍が、試合を、業界を、
ビジネスを、そして国を動かす、
アメリカは本当にダイナミック
だなぁと思った一週間でした。
2. モノリスの活動日記/少しずつ
わたしたちのミッションは
『お金にまつわる情報格差をなくし、
最良の意思決定をサポートするパートナーであり続ける』です。
・透明性のある情報を発信する
・手数料型の一回きりで終わるのではなく、
顧問型で、サポートし続ける
・お客様側に立って、
金融機関やその他業者を折衝
をするなど、色々実施してきています。
さて、次なるステップとしては、
世界のどこのプライベートバンクに
お金を預けていても、
複数の金融機関に預けていても、
一元化して、自分の資産がスマホやPCで、
日本語で見ることができるシステム/アプリをローンチします。
これによって、
・言語の障壁をなくす
・モノリスのアドバイス価値によって資産の増減が見える、つまりモノリスの価値がわかる
ようになります。
日本では、マネーフォワードが有名ですが、
このグローバル、かつ富裕層版といったところです。
もちろん、私たちのミッションは
資産を増やすことだけではなく、
その先の使い道や、
資産を築く為の事業支援など
色々ありますが、
徐々にミッションを体現していきます。
3. 金融コラム/上場=成功の終焉
最近は、上場=成功のイメージが薄れていることを感じます。
東京証券取引所が市場再編とともに流通株式数などの新たな上場基準を設けて、
PBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込む、
またはROE(自己資本利益率)が8%未満の企業に対しては改善を要求。
これが原因で、上場を維持するのが
難しくなってきている企業が増えています。
ベンチャー界隈の友達と話していても、上場への情熱が少しトーンダウンしている感じがします。
最近流行っている、SaaSのビジネスモデルなどで見られる赤字上場ではなく、
しっかりとビジネス基盤を作り上げてから上場を考えるパターンを考える人も多くなっています。
さらに、前回のメルマガで書いた外国人投資家やアクティビスト(物言う株主)
からのプレッシャーも強まり、
企業が本来追求したいビジョンを達成するのが
難しくなってきていることを感じますね。
ちなみに、2010年から今年までの約13年間で、
世界のアクティビストが日本企業を対象に投資した594社を見てみると、
その活動による株価リターンの中央値は約6.9%でした。
一番リターンが大きかったのは、
「EM Systems Co Ltd」は
アクティビスト「United Managers Japan Inc」の活動開始後、
なんと約397%のリターンを記録。
また、前回のメルマガでも取り上げた「Raysum Co Ltd」では、
アクティビスト「Oasis Management Co Ltd」が
活動開始時に64.22%という高い持分比率を保有し、
その結果、同社の株価リターンは約101.13%と大きく上昇しました。
そして逆に驚いたこととしては、「Stake Only: No Public Activism」
(公開的な活動なしのみの持分)がアクティビストの最も一般的な投資理由でした。
これは、アクティビストが企業に大きな変更を求めることなく、
まずは株を保有することにしています。
つまり、物を言わない、物言う株主です。
まぁ、アクティビストと言われる投資会社が
株を保有すると、
他の投資会社が反応したりすることもありますが。
このような背景から、
最近の上場企業では新たなトレンド、
「戦略的非公開化」つまり上場廃止が見受けられます。
一時的に上場市場から離脱し、非上場化して、
経営の抜本的な改革を行います。
非上場化の具体的な例を挙げると、たとえば、
プライベートエクイティファンドのカーライルは、
・岩崎電気(23年6月上場廃止)
・ユーザーベース(23年2月上場廃止)
・東京特殊電線(23年1月上場廃止)
・AOI TYO HD(21年9月上場廃止)
・マネースクウェア(22年12月上場廃止)
・日立機材(15年3月上場廃止)
・キトー(03年上場廃止)
など、数々の企業と共に上場廃止を実施しています。
そして廃止後には、10年後を見据えたビジョン策定を行う経営合宿を開催。
この「バックキャスティング」により、目指すべき場所から逆算して、
改革や資源の獲得、戦略を立案しています。
社長を入れ替えたり、業績連動やストックオプションを導入した給与体制を構築したり。
またファンドの強みを活かした、海外やM&A展開なども行って業績を改善させます。
最近は、
非上場化して、再上場した会社も出てきています。
結婚式やレストランの運営を手掛けるノバレーゼは、2016年にポラリスキャピタルグループのTOBを受けて非上場化し、経営改革を行いました。
その成果が認められ、
先月には東証スタンダードに再上場。
初日終値ベースの時価総額は130億円
を記録しました。
営業利益率は改革前の9.3%から
16.1%へと大きく向上し、
積極的な経営を展開しています。
私たちモノリスも最近、経営合宿を行い、
短期的な数値や戦術に囚われず、将来を見据えたビジョン策定を行いました。
その結果、事業の目的がより鮮明になり、
ビジネスが加速することを実感しました。
このメルマガの読者は未上場企業のオーナーの方々が多いわけですが、
投資家としては、
アクティビストに相乗りして、リターンを追究。
経営者としては、不確実な時代、
将来のことなんて誰にもわからないから、
目の前のことをやりたいようにやろう、
将来のことを考えても意味がない
という最近の風潮にのっからずに、
5年、10年単位で本当に
会社がなりたい姿を話し合い、
それに向かって、行動する。
なんていうのも、ありかもしれません。
4.経営コラム/海外進出企業と株価の関係
さて、上記のコラムでは、
カーライルが企業の改革を行う際に、
海外進出を支援する機会があると書きました。
そこで、過去10年間で海外資産の増減があった153社の日本企業のデータを基に、
海外進出した企業とそうでない企業の株価のパフォーマンスを比較してみました。
まずは、各業界別の日本における資産の増減率です。
縦軸が業界、y子軸が日本における資産の増減率中央値です。

(BLoombergデータよりモノリス作成)
金融業界では日本資産の割合が最も増加しており(中央値: 21.70)、
つまり、金融業界の企業が主に国内に集中していることを示しています。
一方で、生活必需品業界(Consumer Staples)では日本資産の割合が最も減少しており(中央値: -13.91)、これは生活必需品業界の企業が海外進出を行っていることを示しています。
次に、株価トータルリターンのとの関係です。
海外進出した企業の10年間の株価のトータルリターンの中央値は約82.06%。(右側)
これに対して日本国内に留まった企業(逆に海外から日本へシフトした、チャート左側)
の中央値は約53.26%でした。

(Bloombergデータよりモノリス作成)
海外進出を果たした企業の方が、
株価パフォーマンスが高いことが明らかになりました。
特に、「通信」業界と「テクノロジー」業界の海外進出企業は、
それぞれ中央値で207.83%と243.58%のリターンを達成。
そして、「工業」業界の海外進出企業も中央値で
123.38%のリターンを記録しました。
さらに、10年間のトータルリターンが最も高かった3つの企業を見てみます
- 野村マイクロ・サイエンス(業種:工業):1,939.80% 野村マイクロ・サイエンスは、水処理装置の設計および施工、販売、アフターサービスを行う企業で、主に半導体や液晶の製造時に使用される製品を提供しています。
- SEMITEC(業種:テクノロジー):1,642.45% SEMITECは各種センサを製造、販売する企業で、バルクセンサ・薄膜センサ・ 赤外線センサなどの温度センサを主に取り扱っています。
- 平田機工(業種:工業):1,635.01% 平田機工は自動車関連の生産設備とFPD (Flat Panel Display)の生産設備などを製造、
販売する企業で、半導体生産の設備や物流機器および家電関連の生産設備事業も営んでいます。
このような結果を見ると、
海外進出は企業の成長を促進し、
結果的には株価パフォーマンスの向上にも寄与することがわかります。
しかし、これは必ずしも「海外進出=成功」というわけではありませんし
、海外進出はリスクも伴いますし、その準備や経験が求められます。
ここにカーライルのようなグローバルファンドの
ネットワークや経験がいきているのでしょう。
今週も宜しくお願いします。