メルマガ: 193th 「中国ファミリーオフィスの進化と直面する課題、日本の失われた30年を参考にして」
【目次】
- 今週の一言/モノリスの活動日記
1.今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
先週、久々に中国のファミリーオフィスが来日し、打ち合わせを行いました。香港や台湾のファミリーとは頻繁に連絡を取っていますが、中国本土のファミリーとは、外貨の海外移動が難しいビジネスルールや、英語が通じにくいという理由から少し距離を置いていました。今回のファミリーオフィスは香港にも拠点があり、ドル建て通貨を保有しているため、本土というよりかは、香港みたいなものですが。
さて、政治、経済、ファミリーオフィスの事情について話をする中で、【日本の失われた30年に中国も突入するかもしれない】という言葉が印象に残りました。
昨年にも、中国の大手プライベートエクイティファンドの方から連絡があり、【I am looking for a book that explains Japan’s lost decade, you know, as a lesson for China】と言われたことがあり、危機意識に驚いています。
14億人の全てではないにせよ、少なくとも富裕層や経済界で活躍する人々は、この懸念を持っていると思います。そして、【第126号 週刊モノリス 番外編 中国出張チャイニーズエコノミー】にも書きましたが、不安定な政治経済状況を背景に、若者やビジネス界では【出海】がテーマとなっています。個人的には、政府の制度がかんじがらまめだからこそ、バイタリティが強く、スピード感と行動力を持つ中国の人々の性格が形成され、アメリカに負けず劣らず積極的に海外に進出していると思います。
歴史を振り返ると、日本は明治維新後、西洋の文化や技術を受け入れ、近代化に向けて飛躍し、自国の産業も育成しました。一方で中国(清)は、第一次アヘン戦争でイギリスに敗北し、日清戦争も経験、経済主権を失いました。その後、外国資本が鉄道や鉱山を所有し、中華民国が成立するものの、内戦や政府の弱体化により、国内産業は育ちませんでした。
このような歴史的背景を持つ日本と中国は、経済的発展において10年以上の差が開きました。しかし、ここ30年の間に、日本はバブル経済の崩壊とデフレを経験し、失われた30年と呼ばれる時代を迎えました。
一方で、中国は1978年からさまざまな改革を実施。2000年から2010年までは輸出と加工貿易を主導した成長、2010年から2020年までは不動産と家系レバレッジを主導。
中国は世界の工場として地位を確立し、デジタル革命の波に乗り、現在は世界第2のGDP、富裕層の数も世界第2位となり、日本を逆転する形となりました。
2020年以降、従来型の成長モデルは機能不全に陥り、マクロ経済指標はお世辞にも良好とは言えません。しかしながら、最近では、加工貿易からの脱却と自国ブランドの輸出が進み、2024年には不自国ブランドの輸出が、不動産投資の3倍にも達するなど、新たな成長モデルも確立しつつあります。
円高不況で輸出産業が打撃を受け、株価や地価が急騰する一方で実体経済成長率は低下していた日本と、同様に過剰な金融緩和と不動産投資が進み、地方政府が財政難に陥り、消費が落ち込み準デフレに近い状態となっている中国。
しかし、時価総額が衰退していった日本の大企業とは異なり、多くの中国企業は政府の支援を受けながらデジタル時代の国境なき時代に突入し、国際競争力を高めています。このため、中国が日本と同じようなデフレに突入するのか、それとも異なる道を歩むのかは、今後の分岐点に差し掛かっていると言えます。
このような背景から、文化革命後に一代で財を成した起業家が多い中国では、地政学を考慮しながら、ファミリーとしてどのように資産を継承していくのかを深く熟考する段階に来ています。
中国は日本と同様にファミリーオフィスを設立するカルチャーがあまりありませんでしたが、最近では特に、2代目が継ぐファミリーオフィスの設立が増えているようです。
今回会ったファミリーオフィスの生業は製造業ですが、ハイエンド製造業ではないため、成長余地がなく、今まで蓄えたお金をどのように活用していくのか、がテーマとなっています。
最近では政府の承認を受けることで、海外への投資が可能になる制度も整備されています。
また、中国の富裕層は上場企業のオーナーが多いため、そもそも外貨を持っていたり、シンガポールや香港にライセンスを持つ企業も多いです。これにより、企業としてもファミリーとしても、今後の生存戦略を描くことが重要になります。
中国から来たお茶文化を日本様式に変えた茶道を学びながら、どのようにファミリーオフィスが連携できるのかを考えていた一週間でした。


今週もよろしくお願いします