メルマガ: 184th 「和のもてなしから始まる対話——ファミリーオフィスと静かなる挑戦」
【目次】
- 今週の一言/モノリスの活動日記
1.今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
今週は、とある国の民間最大手銀行のオーナーファミリーが来日していて、日本でのビジネスに関して、相談したいという依頼があり、面談をしました。
毎週誰かしらゲストが来るので、お店選びにはそれなりに頭を使います。せっかく来てもらうなら、ただのレストランじゃなくて、日本らしさが伝わる空間がいいなと思っています。本来なら、自分達が所有する空間があればいいのでしょうが。
入口は薄暗く、間接照明が照らされながら、美しい盆栽が飾られ、お茶とともにお香を楽しむことができる。部屋には小さな滝が流れ、水の音がかすかに流れる。
巨大なバックスクリーンには、日本の芸や文化が映し出され、その間に日本の文化を少し話して、その後に和室を軸とした会議室、あるいは食事ができる空間を用意し、そこで商談を行う。
となりの部屋には、バーカウンターがあり、
夜はジャパニーズウィスキーやお酒を楽しめる空間を用意して、たわいもない話をする。もちろん茶室も用意し、体験も提供。
モノリスのお客様や関係者、海外からのゲストだけが入れる空間。
そんな場所が東京に欲しいなと。

さて、話を戻しますが、今回のファミリーは、3代目が現役で銀行のCEOを務めていて、4代目がファミリーオフィスや他の事業を担当しているとのこと。
メイン事業はあくまで銀行ですが、パブリック企業であるがゆえに、家族としての哲学や長期的な想いを反映した事業は、ファミリーオフィスを通じて進めているそうです。
投資先としては、テクノロジーやエネルギー分野が中心。特に力を入れているのが再生可能エネルギー。実はご本人がもともとエネルギー系のエンジニアだったそうで、この分野には何十年も前から深く関わってきたとのことでした。
その中でも注目していたのが、グリーンアンモニア。
地球温暖化の原因とされるCO₂を排出せずに燃やせる、次世代のクリーン燃料として、今、世界的に注目されています。
日本は技術的にも優れていて、エネルギーを海外に頼る構造でもあるので、ここには大きな可能性があると見て、来日を決めたのではないかと思います。

また、自らのエネルギー会社を持つだけでなく、エネルギー関連会社の上場企業にも出資しているそうです。そうすることで、より情報を獲得できることや、影響力を広げながら、より広い視点でエネルギー事業に取り組んでいる様子が印象的でした。
最近は、出会う世界の超富裕層の方によく「どんなふうにビジネスを進めるのか」「どういう人と組むのか」を聞くようにしていますが、多くの超富裕層は、あまり表に出たがりません。
目立たず静かに、でも本質的に影響力のある動きをしたい、という方がほとんどです。
そして、世界中のファミリー同士で協力し合いながら、情報や案件をシェアして動いています。
今回のファミリーもまさにそうで、国名は控えますが、日本から遠く、経済格差が大きい国でもあるので、あまり目立つと生活どころか安全面にも影響がある、というリアルな背景も話してくれました。
そんな背景もあってか、彼らのボードミーティングは、気分を変えるために別の国で開催することもあるそうです。
アメリカのファミリーではありませんが、マイアミで開いたこともあるようで、いわばスタートアップの“経営合宿”のようなものでしょうか。

個人的には、ヒトは天気が良く、空気の澄んだ場所で話すと、自然と前向きな議論になり、日々の緊張感から少し抜け出すことができると思っています。
数年前に、ある経営者からは東京でミーティングをするが緊張感を和らげるために「今回はジャケットはやめてアロハシャツで行こう」と言ってもらったことも思い出しました。
さて、話を戻すと——
今回の出会いから整理できたことがあります。
銀行という本業はあくまでオーナーとして継続しつつも、従業員の数や社会的責任も大きいため、プロフェッショナル経営陣に一定の役割を任せていく。
一方で、ファミリーオフィスでは家族としての価値観や関心のある分野をもとに、資産の分配や事業づくりを行う。
社会課題の解決や次世代への資産・文化の継承といったテーマも軸にしながら、上場企業への出資、スタートアップ投資、自ら会社やファンドを立ち上げるといったかたちで、理想の実現に向かって動いている。
その際に、世界中のファミリーオフィスや富裕層とコミュニティを築きながら、情報・案件・人材の共有と協業を行っていく。
単独ではなく、同じ目線を持った仲間と動くことで、より効率的に、かつ全体最適に近づけていく。
これが、今回の出会いから感じたファミリーオフィスの一つのあり方であり、最近他でも感じる“生態系”のようなものです。
今週もよろしくお願いします。