メルマガ: 183th 「意志ある資本が社会を動かす時代-ファミリーオフィス」
【目次】
- 今週の一言/モノリスの活動日記
1.今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
今週は本屋で『Forbes 未来は買える ビリオネアランキング2025』が目に留まりました。

弊社と関係する方々やプロジェクトが掲載されていたこともあり、手に取りそのまま購入。
特集テーマは“BUY THE FUTURE(未来を買う)”。
誌面では、資産を持たない段階から「未来を買う」ために動き出していたことが、多くの成功者に共通する思考であると紹介されていました。
世界中の富裕層が紹介される中で、日本からは任天堂創業家・山内家が登場していました。
山内さんは「山内家の生存戦略」として、Yamauchi No.10 Family Officeというシングルファミリーオフィスを立ち上げています。
彼はファミリーオフィスを、「資産の管理や運用を銀行や証券会社に任せず、自ら人を雇い、ファミリーの意向を反映した投資や慈善活動を行う存在」と定義。
その考え方を体現するかのように、京都・菊浜で思想や価値観、アイデアが生まれる生態系の形成や街づくりに取り組んだり、上場企業へのTOB、ディープテックやグローバルスタートアップへの出資など、無形資産と有形資産の両方を創出する活動を進めています。
いずれも、ファミリー自身や日本社会への長期的なインパクトを見据えた動きです。
先週のメルマガで触れたとおり、香港ではファミリーオフィスのカンファレンスに参加し、個別の打ち合わせも行いました。
そこで印象的だったのは、多くの海外ファミリーが、自社でファミリーオフィスを構築したり、弊社モノリスのような外部のファミリーオフィスサービスと伴走しながら、家族の価値観を反映した投資やプロジェクトを実行しているということ。
単に資産を守るのではなく、思想を軸に未来をつくる意志が感じられました。
現在、弊社のサービス資料もアップデートを進めていますが、私個人としてはファミリーオフィスを「ファミリーの思想と理念を起点に戦略を構築し、資本配分の最適な意思決定と実行を支える中枢機能」と考えています。
ファミリーの哲学や目標を明文化し、それを実現するための機能を整えることで、はじめて「意思ある資本」が社会に働きかける力を持つようになります。
例 ビルゲイツ-Cascade Asset Managemenet
ジェブベゾス- Bezos Expeditions
https://www.bezosexpeditions.com
ザッカーバーグなど著名な経営者へサービスを手掛けるマルチファミリーオフィス Iconic Capital
具体的には、4つの機能が必要だと考えています。
第一に伝統資産運用。株式、債券、為替、コモディティなどの伝統的な資産クラスを活用し、市場リターンの獲得と独自のアルファ創出。そこから得られたリターンは、家族のプロジェクトや社会貢献活動に再投資され、資産と目的が循環する構造をつくります。
次にインパクト投資・プロジェクト。これは、家族の価値観や関心に根差した事業や社会テーマへの関与です。ファミリー自身が主体的に関与し、資本だけでなく文化や思考を未来に継承していく取り組み。
第三にフィランソロフィー。経済的リターンだけでなく、教育・医療・環境・地域創生など、社会的・環境的課題への資本投入によって、持続的な変化を生み出します。投資の成果は、金銭的指標だけでなく社会的インパクトの可視化にも重きを置いています。
最後にオペレーション。日々の運営、契約管理、外部パートナーとの連携、法務・コンプライアンス体制の整備など、戦略を機能として実装する土台です。
先日香港で打ち合わせをしたシングルファミリーオフィスでは、40名以上のプロフェッショナルが在籍しており、思想や哲学を体現するチームが構成されていました。
投資責任者のもとに、上場・未上場投資の責任者が置かれ、それぞれの資産クラス(株式、債券、PE/VCファンド、未上場企業投資、ヘッジファンド、不動産など)を担当する専門家が配置されています。また、データアナリストも在籍し、定量的な判断を支えています。
投資以外のチームでは、COOを筆頭に、オペレーション責任者や外部連携の責任者、法務・コンプライアンスチームなど、運営全体の強固な体制が築かれていました。
アジアでも最大級のチーム体制を誇るファミリーオフィスの一つだと感じました。
これまで多くのファミリーと話してきた中で、共通して感じるのは、それぞれのファミリーが出自や主戦場とした産業を起点に思想を構築しているという点です。
例えば建設業で財を築いたファミリーは、都市開発を通じて人々の暮らしを支えてきた一方で、CO2排出や廃棄物、騒音といった社会課題に直面してきました。だからこそ、事業や運用で得た資金をそれらの社会課題解決に挑むスタートアップへの出資に振り向けたり、財団を通じた寄付活動に取り組む動きが見られます。つまり、自らが育った環境を俯瞰し、その影響力を再定義しながら社会にどう貢献するかを考える姿勢があるということです。
さらに、未来に向けたテーマとしてよく議論されるのが、ライフスタイルの変化。物質主義から精神性へのシフト、デジタルやAIが進展する時代において、あえて“人間らしさ”や“感情”に焦点を当てる流れ。利便性が向上する一方で、心が置き去りになっている現代において、人々のウェルビーイングにどう貢献できるかを、各ファミリーが育った産業を軸に、考えている人たちが増えているように思います。
来月打ち合わせをする予定のユーラシア圏のとあるファミリーは、人々が精神を落ち着かせながら、かつ長生きできるような研究施設を構築しています。これが病院であれば、あからさまでありますが、ファミリーが培ったラグジュアリービジネスを活かして、施設らしくない、むしろ高級ホテルのような空間でウェルネスを追求できる環境を整えながら実践しています。
私たちモノリスも、こうした思想や哲学の設計を大切にしながら、4つの機能を通じて、伴走できる存在として成長していきたいと思っています。
今週もよろしくお願いいたします。