メルマガ: 178th 「数億円規模でも進むM&A──30代起業家たちのリアルな決断」
【目次】
1. 今週の一言/モノリスの活動日記
1. 今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
今回は弊社オフィスに隣接する雅叙園で執筆しています。
都会の真ん中にありながら、緑が多く、静かに流れる滝の音を聞きながら過ごせる、都会のオアシスです。 混雑も少なく、落ち着いた時間が流れていて、心が少しリセットされる感じがしてとてもいいなと改めて思いました。

さて、最近、30代の起業家たちの間で、会社売却の話を耳にする機会が本当に増えてきました。
弊社への相談だけでなく、友人同士の会話の中でも、
「実は売却の打診があって」
「数億円くらいだけど、悪い話じゃないかも」
といった話が自然に出るようになっています。
一昔前は、M&Aといえば10億円以上が当たり前というイメージもありましたが、今はそんなことはありません。
数億円規模でも十分に検討対象になる時代になっています。

(https://www.marr.jp/menu/ma_statistics/ma_graphdemiru/entry/35326)
売却の対象になっている会社にも共通点が見えてきました。
単にプロダクトやサービスが尖っているだけではありません。
当たり前ですが、利益が出る構造や再現性ができているか、そこが非常に重要視されています。
もちろん、経営者自身の営業力でキャッシュを稼いでいる会社も売却されていますが、その場合は売却後も経営者が会社に残るケースが多いです。
経営者が動き続けないとキャッシュフローが回らないことを、買い手側も理解しているからです。
売却案件として目立つ業種は、SES、デジタルマーケティング、ITサービス、エンタメコンテンツあたりが中心。
これらの領域は、キャッシュ化のスピードが早く、一定の利益モデルができていれば買い手がつきやすい印象です。
背景には、新規事業をゼロから生み出す難しさがあると思っています。
地方のキャッシュリッチ企業や上場企業も、自前で新規事業を立ち上げるより、既に形になったスタートアップをM&Aで取り込む方が確実だと考える流れが加速しています。
さらに大きな構造変化も感じます。
大企業出身の人たちが、起業して新しい価値を作ろうとチャレンジする一方、大企業側は新規事業を手掛けられる人材が減り、代わりにM&A部隊を強化していく。
そんなサイクルが日本でも静かに根付き始めています。
売却後の起業家たちは、多少生活に余裕ができるものの、それをゴールにする人はほとんどいません。
「心に少し余裕を持たせながら、また新しいことに挑戦したい」
そんな声を聞くことが圧倒的に多いです。
売却はあくまでひとつの通過点であり、
本当の意味で自分の人生を進めるための、新しいスタートなのだと改めて感じます。
ただその過程で、自分自身への問いに向き合わざるを得ません。
「自分は何のために起業したのか」
「本当に届けたかった価値は何だったのか」
起業当初は、その会社が、何を提供し、どのような価値をもたらし、世の中にどう変革を起こし、どういう会社になりたいのか、を考えていた人やなんでもいいから起業を通してコンプレックスに打ち勝っていきたい、とりあえず稼ぎたい、お金持ちになりたい、みたいな動機があったと思います。
起業当初の思いを持ち続ける人もいれば、年数が経つにつれ、売上の成長、利益の数字に追われ、本来の目的を見失ってしまう人もいます。(とりあえず稼ぎたい人はある意味目的も見失っていないですが)
その結果、【あれ、私は何をしたかったんだっけ】と売却後に燃え尽き症候群や起業うつに陥る人がいるのは、 きっとそこに理由があるのだろうと思います。
(アメリカではこうした起業家向けコーチング市場が急拡大しているのも、象徴的です)
多くの起業家たちと話していて、やはり思うのは、
「どんな人生を歩みたいか」を日々の中で持ち続けられるかどうかが、大切だということです。
忙しさに流される中でも、立ち止まって未来を描き直せるか。
そこに、大きな違いが生まれていると実感しています。
そんなことを考えながら、
先日、ニュージーランドで日本人ご夫婦が営む小さなワイナリー「Sato」のワインを飲みました。
異国の地で、繊細な感性と粘り強さを持ち寄り、
時間をかけて育てられたその味わいには、
日本人らしい誇りと新しい価値の両方が詰まっていました。
こうして海外で挑戦し、また新しいかたちで日本に価値を届ける。
そんな生き方を目にするたびに、自分もまた、少し背筋を伸ばしたくなります。
今週もよろしくお願いします。
