メルマガ: 177th 「懐かしさが価値になる時代に、表参道で考えたこと」
【目次】
1. 今週の一言/モノリスの活動日記
1. 今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
最近はファッション関連の案件が続き、表参道や青山を訪れる機会が増えています。
歩くたびに、日本が誇るファッションストリートの空気を感じます。最新のトレンド、ヴィンテージ、古着。あらゆるスタイルが混ざり合いながら、アジアの最先端を走っている場所だと実感しています。
先日、バナナボートという古着屋に立ち寄りました。オーナーがアメリカで買い付けたリーバイスのジーンズがずらりと並んでいて、数十年前に作られたものが50万円以上で販売されていました。Gジャンも数十万円の価格がついており、当時は数万円だったはずのものが何十倍もの価値に。日常着だったものが時を経て「資産」に変わっていく、不思議で美しい現象です。私自身、幼い頃に履いていたリーバイスをなぜ捨ててしまったのかと後悔しました。
日本には、こうしたヴィンテージ文化を守り続けている人たちが多く、世界中のコレクターがそれを目当てに訪れるほどの存在感があります。
また、オニツカタイガーの旗艦店にも立ち寄りました。観光客で溢れており、その注目度の高さをあらためて実感しました。

1949年に靴の問屋からスタートした鬼塚商会は、1964年の東京五輪で選手が着用したことを機に知名度を高め、私も学生時代に体育館シューズとして愛用していました。その後、アシックスと統合され一時はブランドの存在感が薄れた時期もありましたが、2002年に復刻。映画『キル・ビル』で着用されたことをきっかけに、再び世界的な注目を集めました。
最近ではデニムライン「DENIVITA」にも力を入れていて、クラシックとロックを融合させたビジュアルが印象的でした。ヴィンテージの風合いを活かしつつ、独自の世界観を築いていると感じました。
https://www.onitsukatiger.com/jp/magazine/denivita

こうしたブランドの展開を見ていると、ファッションにはやはり周期があると感じます。今流行しているものの多くは、数十年前のスタイルをベースに、現代的なアレンジが加えられたものです。かつて流行ったオーバーサイズのシルエットがまた戻ってきたり、眼鏡も昭和から平成にかけて一度廃れた黒縁が近年再び人気を集めています。次のトレンドでは、さらに進化した形や装飾が加わったアイテムが、Z世代を中心に広がっていくのではないでしょうか。
この背景にあるのが、ノスタルジア(郷愁)だと思います。親世代の文化や幼少期の記憶が再評価され、再び手に取りたくなる。たとえばカラオケでは、最新曲だけでなく学生時代に流行した歌を歌う人が多いように、音楽にも“ヴィンテージ”という価値が生まれているように思います。
日本のファッションブランドがこうして世界で注目されることは、非常に嬉しく感じます。
一方で「クオリティは高いが、知名度が低い」と言われるように、ブランディングやマーケティングがまだ課題の多い分野だと感じています。
そうした中、ファッション業界の王であるLVMHグループの戦略は非常に示唆に富んでいます。以下のような多層的な構造で、ブランドの発掘と成長を戦略的に進めています。
LVMH Luxury Ventures:新進気鋭のファッションブランドやスタートアップに対する初期投資を担当
L Catterton:中堅〜成長期ブランドへのバイアウト投資を通じて、事業規模を一気に拡大
Christian Dior:LVMHの中核を担う企業。ここがLVMH株式の約42%を保有
Financière Agache:アルノー家のファミリーオフィス。Diorの96%を保有し、グループ全体を統括
https://www.financiereagache-finance.com/en/index-en
さらに、ファミリーオフィス傘下のAglaé Venturesは、Airbnb、Lyft、Netflix、Slack、Spotifyなどのテクノロジー企業にも積極的に投資しており、ファッションを超えてライフスタイル全体を視野に入れた取り組みを行っています。資本の力を最大限に活用してますね。
古き良きものを再解釈し、最先端と掛け合わせてブランドを構築する。
懐かしいのに、新しい。が共存する世界観。
そうした価値観が、これからの時代のブランドに求められていくように感じました。
日本から生まれる価値を、もっと世界に届けていきたい。
そう思えた一週間でした。
今週もよろしくお願いします。