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メルマガ: 175th 「伝統と挑戦が交差する転換点 日本の富裕層の未来とは」

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目次

1. 今週の一言/モノリスの活動日記


1. 今週の一言/モノリスの活動日記

こんにちは。門垣です。

3年半、毎週書き続けてきたこのメルマガですが、先週はお休みしてしまいました。

言い訳をするつもりはありませんが、数ヶ月かけて準備してきたプロジェクトが本格的に始動し、先週は週末も連日動き続けていたこともあり、気づけば、書くためのエネルギーが残っておらず、自分の未熟さを痛感しました。

それでも、この一週間で得た学びは大きく、書くことの意味や原点にもう一度立ち返る良い機会になったと感じています。

さて、今回のプロジェクトでは、世界の超富裕層、そして日本を代表する数多くの経営者たちと、極めて密度の濃い時間を過ごしました。

その中で、改めて「日本とはどういう国なのか」「これからの富裕層はどうあるべきか」という根源的な問いに向き合う時間となりました。

いまから約160年前。

江戸幕府が終焉を迎え、大政奉還が行われた直後、明治天皇によって発せられた「五箇条の御誓文」は、新しい国家の進むべき方向性を示す原則でした。

  • 国の重要なことは、一部の権力者だけでなく、広く民の声を聞いて決めること
  • 身分や階級を超えて、力を合わせて社会を築くこと
  • 官僚や武士に限らず、庶民もそれぞれの志をもって国を支えること
  • 古い慣習にとらわれず、理と正義に基づいた新しい道を選ぶこと
  • 世界の知識を取り入れ、日本をより強くしていくこと

これは、単なる政治的改革ではなく、日本という国が新たな文明を築くための魂のこもった原則だったと感じます。

(明治神宮にて筆者撮影)

日本は島国です。

大陸から隔絶されているがゆえに、外圧から守られ、独自の文化や美意識、伝統が育まれてきました。

村社会的な小さなコミュニティの中で、自然と共に生き、価値観を丁寧に継承してきた背景があります。

その結果、日本には100年を超えて続く企業が世界で最も多く存在し、その数は約3万社とも言われています。

一世代だけで終わらない商いや思想が、長く引き継がれてきたこの国ならではの文化です。

樹齢1500年

(筆者撮影)

そんな日本が、孤立性を保ちながらも経済面で世界トップクラスに位置しているという事実も、驚異的であり、誇るべきことだと思います。

現在、日本のGDPは世界第4位、富裕層人口ではアメリカ・中国に次いで第3位。これは小さな島国が築き上げてきた奇跡の一つです。

これまで日本には、長年の伝統や資産を引き継ぎながら慎重に守ってきた「旧来型の富裕層」が多く存在していました。

一方で、ここ10〜20年で急速に台頭してきたのが、いわゆる「ニューリッチ」と呼ばれる層です。

経済的に自由になりたい、誰にも縛られずに生きたい。世界を変えたい。誰かに認められたい。あるいは、自分のコンプレックスを乗り越えたい。

そんな強い動機を原動力に、自ら事業を起こし、成功を掴んできた人たちです。

彼ら・彼女たちは経済的な豊かさとともに「意味のある生き方」や「新しい社会的な価値」を求める傾向が強く、旧来の資産家とはまた異なる感性とスピード感で動いています。

さらに、世界のテクノロジーが発展し、情報や価値観が国境を超えて共有されるようになった今、

これまで世界を意識してこなかった日本の経営者や資産家が、急速に世界を「身近なもの」として捉えはじめています。

今回お会いした多くの日本のリーダーたちも、「グローバルで勝負したい」と語るだけでなく、「もっと世界を知りたい」と強く感じている様子でした。

たしかに、日本国内で成功すれば、経営者同士のつながりもでき、心地よい住環境、美味しい食事、安全で満ち足りた生活を手に入れることができます。

欲しいものはほとんど手に入る、といった感じです。

そして、国内で完結する人生もまた、決して否定されるべきものではありません。

それでも、ある地点まで到達した人々が「その先」を見据え、次なる挑戦として世界を見つめ始めるという流れは、明らかに加速していると、私は感じています。

一方で、世界の富裕層、特に欧米のファミリーは、単なる資産継承を超えて、自らの哲学や文化、価値観を「プリンシパル(原則)」として定め、次世代に受け継ぐ取り組みをファミリーオフィスという形で行っています。

最近では、そうした欧米のファミリーたちが、アジアに拠点を移し始めていることにも気づきました。

それは一時的な移住や投資ではなく、

・子どもたちの教育

・文化的理解

・長期的なビジネス展開

といった観点から、実際に現地に住み、深く関わるという極めて現実的な動きです。

対して日本では、家訓や文化の継承はあっても、それを組織的に体現するファミリーオフィスという概念がまだ根づいていません。

その背景には、日本の金融制度の構造的な問題もあります。

富裕層向けの資産管理や承継に特化した仕組みが整備されておらず、証券・銀行・保険といった縦割りの金融機関が、断片的なサービスしか提供できていないのが現状です。

ファミリーの全体像を俯瞰し、世代を超えた視点で資産と思想を統合的にマネジメントする“受け皿”であるファミリーオフィスサービス提供者が国内にはほとんど存在していません。

そのため、多くの資産が短期的な視点で使われたり、継承の中で分散・消失していくという問題が続いています。

会社として財閥の名前が残っていたとしても、その実態がバラバラになっているのは、まさにその象徴だといえるでしょう。どことは言いませんが。

この一週間を通じて強く思ったのは、

これからの日本の富裕層や経済的リーダーが、
かつての明治政府のように、

  • 自分たちのファミリーやコミュニティで、何を大切にしたいのか
  • どのように生きていきたいのか
  • どんな価値観を見出していきたいのか

こうした問いに正面から向き合い、思考を整理し、言語化し、そしてそれを実行に移す“仕組み”として、ファミリーオフィスという手段を持つべき時代が来ているのではないかということです。ポジショントークではないです。

そのプロセスにおいて、私たちモノリスが掲げているビジョン――

「日本発、世界から必要とされる最高峰のマルチファミリーオフィスを目指して」

これを、ただの理念として語るのではなく、実際のサービスや対話、構築によって体現していくこと。

まさにその一歩を、今回のプロジェクトを通じて踏み出した気がしています。

今週もよろしくお願いします。

(筆者撮影: 弊社目黒オフィス近辺にて)

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