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メルマガ: 166th 「社会と向き合って/経営会議/フジテレビ問題」

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【目次】

1. 今週の一言/社会と向き合って

2.モノリスの活動日記/経営会議

3. 金融コラム/フジテレビ問題


1. 今週の一言 / 社会と向き合って

こんにちは。門垣です。

健康、精神、社会、家庭、経済の5つのテーマを軸に日々を過ごしていますが、最近は社会と向き合う時間が増えてきたように感じます。

週末、大学時代の友人が取締役を務める会社について話を聞く機会がありました。

そこは、バリア(障害)をバリュー(価値)に変え、社会を変革することを目指している企業です。

日本の障害者(身体・精神・知的)の数は人口の約7.5%にのぼり、障害者手帳の種類は283種類にも及ぶそうです。それぞれ事情や症状が異なるため、不自由なく生活するには、課題を洗い出し、一つひとつ解決策を見つけていくことが求められます。

特に印象に残ったのは、「社会に障害がある」という言葉。

一般的には、当事者の努力によって問題を解決することが求められますが、環境や社会
そのものが進化することで、新たな可能性が生まれることもあります。

この言葉を聞いたとき、ふと祖母のことを思い出しました。

私の祖母は視力を完全に失い、施設で暮らしています。どれほど優れた大学病院で診察を受けても、もう治ることはないと言われています。しかし、一方で目が見えない分、耳や口の機能が驚くほど発達しています。

一昨年、祖母の施設の部屋にWi-Fiを設置し、Google Homeを導入したところ、ラジオや演歌を楽しむようになりました。昔の時代では考えられなかったような、まるで魔法のようなテクノロジーに感銘を受けていました。

そして今年の年始に施設を訪れると、施設全体にWi-Fiが整備され、テクノロジー化が進んでいました。

弱みにばかり目を向けても、解決できないことがあります。しかし、一見バリア(障害)に見えるものも、視点を変えて俯瞰することで、強みや価値へと転換できるのだと実感しました。

友人の会社が、このような取り組みを経済的な事業として展開していることに感銘を受けると同時に、弊社の主軸である金融は、基本的に「お金がお金を生む」ビジネスであるため、そのままでは社会的な価値が生まれにくいと改めて感じました。

だからこそ、お金の使い方や循環の仕組みについて、もっと深く学ぶ必要がある -そんなことを考えた一週間でした。

2. モノリスの活動日記 / 経営会議

先週、メンバー全員で四半期に一度の経営会議を開催しました。

我々のミッションやビジョンを実現するために、

クレドや目標の再確認

ビジネスモデルの見直し

サービスの改善・拡充

社内人事制度の検討

などについて、4〜5時間にわたり議論を重ねました。

日々の業務に忙殺される中で、全体を俯瞰する視点を忘れがちですが、改めて「モノリスが存在する意味」について考え、我々の強みや弱みを再認識する有意義な時間となりました。

今年は、決めたことをスピード感を持ってやり抜き、見直し、さらに改善する。

当たり前のことを当たり前に実践できる組織を目指します。

また、お客様とともに
このサービスを創り上げていきたいと考えています。

そのための機会も、来週からさらに増やしていく予定です。

雅叙園(左)と弊社オフィスアルコタワー(右)

3. 金融コラム / フジテレビ問題

世間はフジテレビ問題で騒がしくなっています。

多くの芸能人やテレビ関係者、SNSユーザーがコメントを発し、実質的な支配者とされる日枝氏を煽るような発言が飛び交っています。

一方で、それに便乗してフジ・メディア・ホールディングスの株を買い漁る個人投資家、静観する機関投資家など、多くの関係者が動き始めました。

弊社のアクティブ運用プラン(株式ヘッジファンドスタイル)でもこの問題を取り上げ、買い・静観・空売りのいずれかの助言を行っています。

さて、最終的にどのような結末を迎えるのでしょうか。

本日は助言内容とは別に、今回の騒動について考察します。本来であればフジテレビや芸能界の裏事情にも言及したいところですが、それは本質的ではなく、プライバシーの問題もあるため、金融的な側面から簡単にまとめてみます。

フジ・メディア・ホールディングスの収益構造

フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの決算期は3月。現在はQ4に入っており、次回Q3の決算は2月5日(水)に発表予定です。

少し遡ると、経営の俯瞰と管理を目的として、2008年10月1日に日枝代表取締役会長のもと、ホールディングス体制へ移行しました。

社名には「メディア」が含まれていますが、「メディア」を広義に捉え、人と人を結びつける媒介として広告収入に依存しない経営を理念とし、コングロマリットメディア企業として幅広く事業を展開してきました。

事業セグメントは以下の3つに分かれています。
メディア・コンテンツ事業
都市開発・観光事業
その他事業

過去30年間で最も売上が高かったのは2019年度(6,690億円、営業利益347億円)です。(純利益が最も高かったのは2012年度の613億円)

売上高推移

(出所:Bloomberg)

昨年度の売上は5,664億円。その内訳を見ると、売上の約60%が放送・放送関連事業であり、以下のような収益源があります。

テレビ広告(タイム広告、スポット広告)
配信広告
番組費

今回の問題を受け、各社がCMの出稿を差し控える動きが加速しており、広告収入の減少が懸念されます。また、差し替えたCMについては広告料を請求しないと説明されており、業績への影響は避けられないでしょう。

さらに、フジテレビジョン単体の利益は年間約10億円前後であり、グループ全体と比較すると微々たるもの。営業利益率はわずか0.4%と、ほぼ利益が出ていない状況です。

売上高内訳

サプライチェーンに関しても、

売上の約20%が電通・博報堂から
下請け先は完全子会社のDINOS Corporationを通じて発注するトラース・オン・プロダクト(6696 JT Equity)が約20%

と、当たり前ですが広告代理店や関連企業との密接な関係が見えます。

サプライチェーン

(出所:Bloomberg)

都市開発・観光事業では、
サンケイビル
グランビスタ ホテル&リゾート

といった事業を展開。直近のQ2決算では、メディア・コンテンツ事業の営業利益率が2.3%と低迷する一方で、都市開発・観光事業の営業利益率は16.3%と高く、利益の大部分を支えている状況です。

また、土地・建物などの資産総額は1兆円を超えており、資産売却による流動化が株価上昇の一つの論点となっています。

フジ・メディア・ホールディングスの株価と株主

過去30年の株価推移を見ると、

最高値は2000年の8,900円
最低値は2020年の1,011円
現在は1,900円前後を推移

株価推移

(出所:Bloomberg)

時価総額は4,473億円(1月24日付)ですが、自社株保有率は10%。

自社以外の主な株主トップ4
東宝(7.93%)
Dalton Investments(5.83%)(物言う株主)
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)(5.3%)
シルチェスター・インベストメント(ロンドン拠点のアクティビスト)(4.82%)

株主構成

(出所:Blomberg)

東宝とフジ・メディア・ホールディングス(2.65%保有)は株式を持ち合っていますが、東宝は今回の事件に関し、事実関係の調査を依頼しているとのこと。

また、東宝の大株主は阪急阪神ホールディングス(時価総額9,700億円)であり、東宝の株式25%を保有しています。

こうした日本特有の持ち合い株の関係や、兼任取締役の存在、個人的なつながりが、不透明な忖度を生んでいる可能性があります。

アクティビストの介入と今後の展望

マスコミでも指摘されているように、日枝氏は1988年に生え抜き社長として就任して以来、37年近くフジテレビに君臨しており、その「長すぎる支配体制」について、物言う株主が批判を強めています。

この影響もあり、ROEは4%台と低迷、PBRも0.5倍を切る水準。普通に考えれば、変革を起こせない企業と位置付けてもおかしくないでしょう。

昭和の大企業の重役や政治家は、世間の騒ぎを十分に認識していないことが多く、SNSを活用するわけでもなく、側近のメンバーも忖度によって正確な情報を伝えていないケースが散見されます。

今回の騒動も、どこまで経営陣に届いているのか不透明ですが、こうした企業ガバナンスの甘さに目をつけたハゲタカ型アクティビストが、日本市場への参入を強める流れは加速するでしょう。

その流れを嫌い、上場を廃止し、非上場化する動きが今後さらに増えていくことが予想されます。

人間に私利私欲がある限り、この問題は世界中からなくなることはないでしょう。

今週もよろしくお願いします。

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