メルマガ: 154th 「30年の時を経て/ヨーロッパ超富裕層の動向と一次情報を少し添えて」
【目次】
1. 今週の一言&モノリスの活動日記/ 30年の時を経て
2. 富裕層の公然の秘密/ ヨーロッパの超富裕層の動向
1. 今週の一言&モノリスの活動日記/ 30年間かけて
こんにちは。門垣です。
先週はパリにて、フランスの大手サッカークラブの関係者とお会いする機会がありました。
私も小学生から高校生までサッカーをしており、今はすっかり走れない体型になってしまいましたが、スポーツ全般、特にサッカーは今でも大好きです。
以前もメルマガでお話ししましたが、将来の夢のひとつにサッカークラブの経営がありますので、今回の出会いは非常に心躍るものでした。
お話の中で特に印象に残ったのは、日本人選手の育成についてです。
驚いたことに、ヨーロッパの大手クラブは世界中にエージェントを派遣し、幼い頃から才能ある選手に目をつけています。
優秀な日本人プレーヤーもその対象となり、チャンスがあれば選手が所属するリーム(主にJリーグなどのクラブだと思いますが)と連携し、彼らにサッカー留学や海外体験の機会を提供しているのです。
その結果、才能ある若手日本人選手たちは、幼少期から海外での競争やサッカーを学び、さらにコミュニケーション能力や語学の重要性も体感しています。
帰国後もその経験を糧に自己成長に励む選手が多いようです。
例えば、ある現役の日本代表選手は、高校時代にヨーロッパのビッグクラブでの経験を通して、公私ともに悔しい思いをたくさんしたそうです。
しかし、10年以上経った今、そのクラブと再び縁が繋がり、トップチームのレギュラーとして出場し、活躍しています。
幼少期の経験が、その選手の思考や人格に大きな影響を与えたのだと感じました。
もちろん、大人になってからも多くを学ぶ機会はありますが、幼少期の体験が与える影響は非常に大きいと改めて思いました。
現在の中学・高校年代のサッカー日本代表は、世界でもかなり強くなっています。サッカーだけでなく、他のスポーツでも日本人選手が世界で活躍している姿を見ると、1993年にJリーグが始まってから約30年が経過し、その時間が育んだ成果が今、現れているのだと実感します。
ビジネスの世界も同じだと感じます。
遠回りに見えることも、結局は「教育」が最も大切だと痛感した一週間でした。

2. 富裕層の公然の秘密/ヨーロッパの超富裕層の動向
スポーツビジネス
今年のフォーブス世界富豪ランキングのトップに輝いたのは、LVMHグループを率いるベルナール・アルノー家です。
その資産額は約34兆円(日本円換算)に達しています。
LVMHはラグジュアリーブランドを中心に事業を展開する企業ですが、アルノー家はファミリーオフィス「フィナンシェル・アガシュ(Financiere Agache)」を通じて様々な投資活動を行っています。
中でも、Chritian Diorの株式を96%保有し、そのDiorがLVMHの株式を42%保有するという形で、巧みにグループの影響力を保持しています。
2023年のLVMHの売上高は、€86,172 million(約14兆円)に上ります。
近年、アルノー家が注力している分野のひとつがスポーツビジネスです。フィナンシェル・アガシュの売上の90%は、ファッション、香水、時計、リテールですが、残りの10%がワインやその他の投資です。
さて、フランスサッカー界では、アメリカの不動産投資会社コロニー・キャピタルからカタールの投資会社QSI(カタール・スポーツ・インベストメント)が強豪チーム「パリ・サンジェルマン(PSG)」を買収し、世界的なチームへと成長させてきたことはよく知られています。
これに対抗するかのように、最近ではアルノー家もフランス2部リーグのサッカーチーム「パリFC」の過半数株式を取得するための交渉に乗り出しました。Red Bullと共同で出資をするようです。
この件は公開情報となっていますが、取引を主導しているのは、ベルナール・アルノー氏の長男であり、熱烈なサッカーファンでもあるアントワン・アルノー氏(47歳)です。

(ウェブサイトより抜粋)
なお、LVMHグループの競合であるケリンググループも、フランスの「スタッド・レンヌFC」を所有するなど、欧州の大富豪がスポーツビジネスに積極的に参入している状況です。
また、日本が誇る世界の大谷選手(野球) が所属する米ドジャースを過去に保有していた米国人のフランク・マッコート氏もフランスサッカー1部リーグの名門【マルセイユ】のオーナーです。
最近では、日本における上場企業オーナーがプロ野球やサッカーチームを所有していますが、今後も世界の富裕層のスポーツ参入が盛んになりそうです。
アジアへ
世界の超富裕層は、ビジネスを常に長期的な視点で捉えています。現在もアジアへの注目は高く、香港やシンガポールに拠点を設けるファミリーオフィスが増え続けています。
【週間モノリス 第151号「雨の試合 シンガポールよりも香港が優勢か 富裕層の拠点」】でも触れましたが、最新の動向として、ヨーロッパのラグジュアリーファミリーダンヒルが香港にファミリーオフィスを設立したことも、この流れの一環と考えられます。
メルマガの中では、地理的、経済的、そして人口的観点から、香港に富が集まっている点を取り上げました。

(ウェブサイトより抜粋)
例えば、ヨーロッパの超富裕層はスイスやパリ、ロンドンといった都市に拠点を持ち、アメリカにも進出しています。そこにさらにアジア拠点を加えようとする動きが見られます。(本業のビジネスはもちろんのことですが、ファミリーオフィスの拠点も同様に行っています)
詳細は省きますが、彼らとの会話を通じても、各大陸に人材を配置し、現地のネットワークや一次情報を迅速に取得しながら、スピーディーに意思決定を行う体制を整えていることがわかります。
特に、長期的なネットワーク構築と情報収集がビジネスの成功を促進するとの考えが根強いようです。さらに、これらのネットワーク同士で共同投資や事業提携を行うケースも頻繁に見られます。
モノリスとしても、特にアジア、ヨーロッパ、アメリカを中心にネットワークを拡大し、グローバルな視点で日本の強みを理解し、クライアントに有益な情報を提供していきたいと考え、少しずつですがグローバルビジネスを拡大させています。ちなみに、私はこれをグローカルと呼んでいます。(グローバル+ローカル。ウェブサイトにも記載)

(弊社ウェブサイト https://monolith-holdings.com/company/)
さて、アジアの金融ハブであり、約2,700以上のファミリーオフィスが存在する香港(デロイトのレポート参照)では、世界の富裕層の動きに対応するために、ジョン・リー行政長官がシングルファミリーオフィス(特定の一族向けのファミリーオフィス)に対する税制優遇措置をさらに拡大すると発表しました。2025年末までに、さらに200のファミリーオフィスを誘致することを目指しています。
たとえば、これまで株式、債券、ファンド、保険契約のみが対象とされていたキャッシュフォーレジデンシー制度(外国人投資家が一定額を投資することで、その国や地域での永住権を取得できる制度)において、5,000万香港ドル(約10億円)以上の住宅不動産投資も新たに認められるようになりました。
また、投資ビザ取得のためには3,000万香港ドルが必要ですが、そのうち最大1,000万香港ドル分の不動産投資がカウントされるため、今後さらに富裕層が香港へ流入することが予想されます。
今週もよろしくお願いします。