メルマガ: 153th 「番外編 フランス出張 活動内容ちらっと共有」
【目次】
1. 今週の一言&モノリスの活動日記/フランス出張
1. 今週の一言&モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
今これを書いているのは、フランスのボルドーからパリへ向かうTGVの車内です。
先週、お客様のプロジェクトでボルドーを訪問しました。ボルドーではサンジュリアン、メドック、サンテミリオン、ポムロール地区にある8つのシャトー、パートナー会社や倉庫を見学しました。
ボルドー市街

ワインは約7000年前に中東で発見されたと言われていますが、趣味として単に味わうだけでなく、資産として保有する側面もあり、ヨーロッパにはワイン投資に特化したファンドも存在します。
今回のメルマガでは、ボルドーでの学びの中から、
特に「生産の違い」「資産としてのワイン」「伝統とビジネス」
という3つのテーマについて簡単に書いてみたいと思います。
【生産の違い】
基本的なワインの生産工程はどこも似ていますが、ワインの生産には、気候や地形といったコントロールできない要素と、シャトーが工夫してコントロールできる要素があります。
今回は、特にシャトーがコントロールできる部分について触れてみたいと思います。
- 葡萄の品種と割合 ボルドーではメルローが多く栽培され、カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドーなども組み合わせて使われます。品種の割合はシャトーごと、さらには天候や栽培状況によっても異なります。また年毎にも配合割合を変えるようです。
シャトーマルキドテルムの畑。今回はすべてのシャトーがワインを収穫した後でした。


- 樽の種類、数、熟成期間 新しい樽を毎年使うシャトーもあれば、同じ樽を数年間使うシャトーもあります。中には30種類もの樽を使い分けるシャトーもあり、これによって味が大きく変わります。熟成期間は12-18カ月が多いようです。
樽での熟成後は、テイスティングを行い、それぞれのワインをブレンドし、最終的に瓶詰して、仕上げます。最近ではデータ分析を用いてブレンドのプロセスをサポートしているシャトーもありますが、ほとんどのシャトーでは、依然として専門家の感覚に頼ったブレンドが行われています。つまり、ワインは再現性が少なく、その年ごとの気候や栽培状況によって出来上がりが異なる、唯一無二の製品と言えるのです。
シャトーフィジャックの樽は毎年新しいオーク樽を活用

- 設備 醗酵や熟成の際、ステンレスやセメントを使うなど、設備にも違いがありました。特にセメントは温度管理が得意だそうです。
こうしたコントロールの工夫と、天候や地形の影響が組み合わさり、手間のかかる繊細な作業だと実感しました。
ポムローム地区のシャトーボールガールの施設。発酵の設備にはセメントを活用

【資産としてのワイン】
ワインの歴史は長く、日本酒や焼酎と異なり、世界的に市場が形成されています。株式のように取引所があるわけではありませんが、シャトーごとに格付けがされ、需給によって価格が形成されています。ワインは現物資産のため、株式のように大きな価格変動はありませんが、需給バランスや格付けの変更により価格が変動します。
高級ワイン100 の価格指数

(https://www.liv-ex.com/news-insights/indices/)
特に今年の9月から10月にかけて、ワイン市場全体で約20%の価格下落が見られました。
この下落率は過去15年で最も高い水準です。
主な原因は、欧州の金利上昇です。
ワインの一般的な流通経路は、生産者であるシャトーからクルティエ(仲介人)、ネゴシアン(ワイン商)、インポーター、酒屋やレストラン、そして最終的に消費者へと渡ります。特に、最初にワインを購入するネゴシアンは変動金利のローンを使ってワインを仕入れており、ボルドーには約300のネゴシアンが存在しています。金利上昇により返済負担が増大し、経営が難しくなったネゴシアンが在庫ワインを大量に売却したため、価格が下落したと考えられます。
その結果、昨年(2023年)に生産されたワインは、今夏にアンプリムール(先物取引のような仕組み)で販売されましたが、例年より約30%低い価格で取引されました。この価格下落は22年、21年、20年の比較的新しいワインにも影響を与え、価格が下落しています。
一方で、ワインの消費量は変わらず、特にファインワイン(高級ワイン)の需要は依然として強いです。
年末のクリスマスや来年の中国の旧正月に向けて、価格は回復すると予想されています。
つまり、世界の富裕層や資本力のある企業にとっては、
今が「買い時」だと感じていることでしょう。
【伝統とビジネス】
ボルドーには6500軒以上の生産者が存在し、何世紀も続くワインビジネスが展開されています。
例えば、私たちが年初から一緒にビジネスを行っているシャトー・フィジャック(サンテミリオン格付け1級、AAA格付け相当)は1600年代から存在し、現在のマノンクール家が1892年から経営を引き継いでいます。
彼らは伝統を守りつつも、新しい設備を導入し、
ビジネスの革新にも力を入れています。
シャトーフィジャックの門

特に心に残ったのは、現在のオーナー家が言った言葉です。
「ここにいる人(従業員)たちは私たちに仕えているのではない。私たちもまた、このフィジャックというシャトーに仕えているのです。」とのことです。
誰に対してもフラットに接しながら、感謝の気持ちを忘れずに、シャトーの繁栄に全力を注いでいます。
写真右青色のコートの女性がオーナー

下記の写真はサンジュリアン地区に位置する格付け4級のシャトータルボの樽倉庫。
この柱は木をイメージ、天井にはブロックが分散されていますが、これは親から子へ、
そのまた子へシャトーと伝統が受け継がれていくようにデザインされたようです。

シャトータルボのオーナーの家族写真

ワインという商品を通じて、伝統と革新が共存するビジネスの奥深さを改めて感じた出張でした。
今週もよろしくお願いします。