メルマガ: 132th 「IT大国台湾/超富裕層の活動とNVIDIAとマイクロソフトのからくり」
【目次】
1.今週の一言/学生時代に戻った気分
2. モノリスの活動日記/半導体メモリ市場の成長ドライバとなるHBM/エンジニアリング業界
3. 金融マーケット/IT大国台湾 超富裕層とNVIDIAのからくり
1. 今週の一言/学生時代に戻った気分
こんにちは。門垣です。
先週から、中国語を勉強し始めました。
仕事で日々わからないことがあれば、その都度調べて解決できますが、
言語に関しては、マラソンと同じで長期戦になるため、
久々に学生時代に戻った気分です。
大学時代に中国語を少しだけやっていましたが、
あの時の方が吸収力がありましたね…..。
本日のメルマガのテーマはAIですが、どれだけ翻訳・通訳技術がリアルタイムになろうとうも、やはり自分の口で喋れた方が、
他の国の人との心の距離は、より近くなれるなぁー
と感じた一週間でした。
2.モノリスの活動日記
先週配信した日本株関連レポート


3. 金融マーケット/ IT大国台湾 超富裕層とNVIDIAのからくり
今回は、急速に注目を集めているNVIDIAと、それを支える台湾のIT産業について。
台湾は人口わずか2342万人と決して大きな国ではないが、IT大国としてその存在感を放っている。
1960年代後半から輸出志向型工業化により、急速な経済成長を遂げた。
特に70年代以降、台湾政府は中小零細企業を支援し、半導体産業やIT企業への投資を続けてきた。
その結果、TSMC、acer、ASUS、ASE、Powertech Technology、Qisda、クアンタコンピュータ、鴻海、LITE-ON、Nanyaといった有名大手企業が誕生。
先日、IT企業ではないが、台湾のとある超富裕層一族の3代目が来日し、打ち合わせや会食に行った。彼によると、上記の企業のオーナーや創業一族は密接につながっており、ほとんどがアメリカで教育を受けた第二世代、第三世代のグローバル人材が多く、世界中でビジネスを展開しているようだ。
国籍もほとんどがアメリカであるが、母国台湾への想いも忘れることなく、実家のビジネスもさることながら、新しい世代として、新たなチャレンジをしている人も少なくないらしい。
今回あった方も、実家はとある領域で世界で2番目の超大手製造関連企業を経営しているが、30代の本人は新たな金融サービスを手掛けている。また、上記の会社の三代目は、友人としてほとんど繋がっており、情報交換もしているようだ。
さて、話を本題に戻すが、
昨今注目を集めている時価総額400兆円超えのNVIDIAについて調べてみる。
ちなみにトヨタの時価総額は53兆円。(5/26時点)
NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアンは1963年台南市で生まれた。
父親が化学エンジニアだったこともあり、ニューヨークのエアコンメーカーで研修を受けたことをきっかけに、家族でアメリカへ移住を決意。
アメリカで育ったフアン氏は、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)や、LSIロジック(電子機器製造企業)で経験を積んだが、元々まじめなエンジニアで、経営などはしたことがなかった。
しかしながら、30歳の時に、クリス・マラコウスキー氏と共同創業を行い、ラテン語のinvidia(未来を見る、無限をみる)から、少し文字を加えたNVIDIAを創業した。
フアン氏は、当時は投資家向けのピッチもまったく得意ではなかったとも言われているが、知り合い経由で、「あいつは優秀だから投資をしてくれ」と言われたVCが投資をして、会社が拡大した。
現在、フアン氏はNVIDIA株の3.53%を保有、金額にして15兆円の資産を保有していることになる。

1999年に上場。
直近過去30回の四半期決算では、売上高がアナリストコンセンサスに届かなかったのは、
わずか2回だけで、勝率は93,33%だ。

(Bloombergデータよりモノリス集計)
今年に入ってから株価は2倍以上も上昇している。
NVIDIA 株価

(出所:Bloomberg)
これらの背景には、主に2つの理由がある。
まず、OpenAIが2020年5月に発表した論文「Language Models are Few-Shot Learners」により、LLM(大規模言語モデル)はニューラルネットのパラメータを増やせば増やすほど能力が向上することが示された。つまり、大量のGPUを投入すれば、それだけ性能が上がるということだ。
次に、Google DeepMindの研究者が2022年9月に発表した「Training Compute-Optimal Large Language Models」によって、GPUを増やすだけでは不十分で、大量のデータを入手し、長時間かけて機械学習させる必要があることが明らかになった。これにより、学習期間中はGPUが最大限に使用され、需要が一気に高まった。
こうした需要の増加により、世界の名だたるIT企業であるマイクロソフト、メタ、アマゾン、アルファベット、デル、オラクル、シスコ、ヒューレットパッカード等から受注をしている。
NVIDIA サプライチェーン

(出所:Bloomberg)
NVIDIAの活動分野

(出所:https://www.tekwind.co.jp/NVIDIA/products/category.php)
Metaは次世代AIのために、年末までに35万台のNVIDIAのGPUを調達する予定が判明したが、IT業界では、この計算能力を確保する勝負になってきている。
また、先日Business Insiderが独自に入手した情報で、マイクロソフトが2024年末までにAIチップ「180万個」の確保を目指している、との報道があった。
昨年NVIDIAが販売した数(H100)は約150万台だ。
それを上回る数を購入しようとしている。
このような爆買いのストーリーの裏には理由がある。
昨今、Open AIのようなベンチャー企業が世界各地で誕生しているが、たとえベンチャー企業がVCから調達しても、事業に必要な分だけのGPUを購入する資金を集めることはできない。何千億円以上の資金が必要になる。
そこで、ベンチャー企業が自由にGPUを活用できるように、マイクロソフトがAzureを提供している。
これはGPUを活用できるインフラサービスだ。
ベンチャー企業の企業価値を計算し、その企業の株式をマイクロソフトが購入する。
しかしながら、
マイクロソフトは現金を渡すのではなく、
保有割合の金額に応じてAzureを使用できる枠をベンチャー企業に渡す仕組みだ。
マイクロソフトのバランスシートには、投資先ベンチャー企業の株が資産として計上されると同時に、負債には該当ベンチャー企業に提供したAzureの使用枠が計上される。
ベンチャー企業がAzureを実際に活用すれば、活用した金額がマイクロソフトの売上となり、
債務から減額していくことになっている。(マイクロソフトには実際に売上金額の現金が入ってくることはない)
24年3月31日時点で、マイクロソフトの現預金は円ベースで12兆円あるため、
この資金を活用してNVIDIAのGPUを買い漁っている、ということになる。
ビジネスとファイナンスを組み合わせたこのスキームが、NVIDIAの売上に貢献していることになる。
今週もよろしくお願いします。