メルマガ 54th 「利上げ時代の布石:好待遇の影響と資金調達の現実」
【目次】
1.今週の一言/好待遇の悪影響
2.モノリスの活動日記/ 三菱モルガンの布石
3.富裕層の公然の秘密/利上げ時に強い業種は!?
4. 金融コラム/ベンチャー資金調達額34%の下落
1. 今週の一言
こんにちは。門垣です。
今週は、イーロンマスクがTwitterのCEOに就任し、従業員の半数を解雇にする、という報道がありました。まぁこの意思決定に関しては、賛否両論ありますが、個人的には、「さすが」の一言です。
というのも、TwitterやGAFAのようなIT大企業は、給与面の待遇や福利厚生などが圧倒的に優れているため、社員に特別感が生まれ、勘違いへと移り変わり、その結果、日中はテラス席のソファで珈琲を飲んで、おしゃべりばっかりしたり、会食という名のパーティーに参加したり、仕事をしてる風に見せかけて、何も生み出していない人が多くなるからです。
やはり、好待遇を受ける以上は、ある程度の競争心や緊張感は必要です。
まぁ、これだけ解雇しても、今もTwitterのサービスは正常に動いてるわけですから。
もちろん、最高の仕事をする社員の方もたくさんいるため、すぐに解雇ではなく、大切にしなければなりませんが、会社としての、「社員のモチベーションをあげるための施策」が、逆に生産性を低めることにも繋がる可能性もありますからね。
待遇がなくては、採用も難しいので、このあたりのバランスは非常に重要になってきます。
そんな私も、サラリーマン時代は、飛行機はビジネスクラス、新幹線はグリーン、移動はタクシー、ホテルは5つ星、会社にはおやつも食事もある環境で育ち、他にもありえないほどの福利厚生があって、給与も良かったですから、入社後数年はとても勘違いしていました。
2. モノリスの活動日記/三菱モルガンの布石
証券会社が、目まぐるしいスピードで、営業戦略にメスをいれようとしています。モノリスが、小規模ながら行う、ビジネスモデルに近づいてきました。
【三菱モルガン、新興向け専門部署を拡充】
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65655950R01C22A1EE9000/
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、投資銀行部門に専門部署を配置し、資金調達やM&Aのサービスを広げ、富裕層向けウェルスマネジメントと連携していく、という報道です。
Bloombergに勤務していた時に、約3年ほど三菱グループを担当していましたが、三菱モルガンの強みはMUFG銀行のブランドや顧客リスト、メリルリンチPB証券から移り変わったプライベートバンク部門、モルガンスタンレーと資本関係を保有したことによる、クロスボーダー(国内外)のM&Aやコーポレートファイナンスでした。
一方で、国内市場における投資銀行部門に関しては、同業他社と比較して力が振るわず、企業の株式等を活用した資金調達を支援するキャピタルマーケット部門は苦戦を強いられていました。
だからこそ、三菱の豊富な顧客ネットワークを活用しながら、上場前のオーナー企業への資金調達やM&Aサポート、上場後の資産運用、さらに海外戦略を支援する、長所を磨き、短所も
改善も行うワンストップサービスを強化するために、組織改革を実施したと思います。
実は、5~6年前から、このビジネスモデルを行いたかった証券会社がありました。SBI証券です。SBI証券はネット証券ではありますが、複数のグループ子会社を活用して、企業オーナーへの資金調達サポート、IPO支援、上場後のオーナーの株式を担保にしてローンを出した運用等、つまり、【企業オーナーを囲い込む一気通貫のサービス】を充実させたかったのです。現在、この戦略が上手くいっているかはわかりませんが、そもそもネット証券から始まったSBIは、大手五大証券(野村、大和、日興、三菱、みずほ)と比較して、社内リソース(特に人員)が欠如しているため、期待以上のスピードで推進できていないように思います。
上場、非上場問わず、オーナーが会社を経営していくうえで、金融会社との付き合いは切り離せないものになります。一気通貫で、特定の会社が面倒みてくれることは良いですが、必ずしも経営者にとって客観的、合理的な提案が来るとは限りません。
また先日、日経新聞より、【貯蓄から投資、まずは金融教育 知識に自身1割止まり】という報道がありましたが、まさに、サービスを受ける側も金融を勉強しなければ、最適な意思決定はできないでしょう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB301LT0Q2A031C2000000/
モノリスのような敢えて金融機関に属さずに、中立的な立場でサポートする会社の方が、経営者の【金融リテラシー】向上の支援できるような教育サービスを打ち出すことが求められているのかもしれません。
3.富裕層の公然の秘密/利上げ時に強い業種は!?
先日、米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.75ポイントの利上げを決めました。
そこで、今回、過去の利上げ局面における、S&Pの業種の指数のパフォーマンスを調べてみました。

(出所:Bloombergをもとにモノリス作成)
1994年からの過去5回の利上げ局面において、全て株価が上昇している業種はありませんでしたが、それでも尚、情報テクノロジー会社は安定的に上昇しています。
今年の利上げ期間に限っては、-21.4%でありますが、新型コロナウイルス、ロシア・ウクライナ戦争の要因も大きくあるかと思います。
各個別の銘柄のパフォーマンスや来たるリセッション対策のポートフォリオ等は、WEALTH CHATサービスでお問い合わせください。
4. 金融・企業コラム/ベンチャー資金調達額34%の下落
第三四半期の世界のベンチャー企業の資金調達額が
全四半期比で、34%下落しました。約16兆円(US112 Billion)から10兆円です。

(出所:CB INSIGHTS)
過去の資金調達額推移チャートをみると理解できますが、コロナ前の水準に戻っています。逆に、コロナをきっかけに、調達額が増えています。これは、これからの厳しい経済環境を生き抜くために、あらゆるベンチャー企業がこぞって、資金を貯めようとしていた、とも考えられます。
下図は、調達額が最も大きかった5社です。

(出所:CB INSIGHTよりモノリス作成)
電気自動車、エネルギー、決済に集約されており、これから生きる上で必要なあらゆるインフラ産業ですね。
TerraPowerは次世代原子炉の開発を行う企業ですが、共同・創業者オーナーはビルゲイツです。
日本の原子力発電は、固体の燃料を用いて核分裂を発生させて熱エネルギーを生み出し、これらを取り出す冷却材の役割を普通の水に任せる軽水炉方式ですが、TerraPowerは、溶融炉といって、ウランやトリウムなどの核燃料物質を溶融塩に溶解させて燃料と冷却材の2つの役割を持つ液体燃料を用いる方式を取り入れているみたいです。
他にも、技術を応用して、放射化学研究を行い、癌治療機器の開発支援も行っているようですね。
向こう1~3年は、ベンチャー企業にとって、とても厳しい時期がくると思います。日本でもこの記事が話題になっているくらいですから。
10億円の資金調達から経営破綻へ スタートアップ代表が語る失敗要因
https://smbiz.asahi.com/article/14751740
今週も宜しくお願い申し上げます。