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メルマガ:206th 「与論島から見える、日本社会の構造と可能性」

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【目次】

  1. 今週の一言/モノリスの活動日記

こんにちは。

門垣です。

先週は、お客様の財団関連のイベントで鹿児島の与論島へ行ってきました。普段はビジネスや資本主義の世界で生きる起業家や資産家の方々が、別の角度から日本や社会課題をみて、視野を広げることを目的とした旅で、今回は15名ほどが参加しました。

昨年は鹿児島の甑島を訪れましたが、今回の与論島は人口約5,000人、牛の数は5,200頭という、人より牛が多い島です。琴平神社や宮司さん、与論町役場、与論民族村、そしてUターンして島を盛り上げようと活動している方々のお話を伺い、島の日常や課題を複眼的に理解する時間になりました。

結論として学んだこととしては、その土地の発展は地形やインフラ、そして産業の有無に大きく左右されるという極めて本質的な構造でした。与論島は川も山もなく、交通や物流の障壁が大きく、産業の基盤をつくる自然条件が整いにくい。空港が開港したのも1972年で、その背景には「島を開く派」と「島を守る派」の対立があり、合意形成に多くの時間を要した地域でもあります。

歴史を紐解いても与論島はスロースタートの地域で、鎌倉時代以降に明との貿易が始まり稲作が広まり、琉球三時代を経て薩摩藩の支配下に入り、明治維新期の変動を経験し、1879年頃に琉球藩の設置や奄美群島の日本返還が行われた流れの中で、近代化が比較的遅れた地域であることがわかります。

また、どの土地でも「進化したい人」と「現状維持を望む人」の対立が必ず存在するという点も印象的でした。日本は稲作文化や神道・仏教が根にあり、集団の調和を重んじるコンセンサス社会であるため、革命的なスピード感で物事が進みにくい一方、文化を守る力が強い。この二つの側面が常に同居していると改めて感じました。

そして、従来の資本主義が前提としてきた「人口増=経済発展」という構図は、地方ではすでに成り立ちにくくなっています。人口が減少し続ける環境で発展を生み出すには、テクノロジーやAIのような現代的な手段だけでなく、地域の特性を活かした新しい仕組みづくり、コミュニティの再編、外部との協働など、複数のアプローチを組み合わせる必要があると感じました。どれか一つの解ではなく、総合的な発想の転換そのものが求められているように思います。

一方で、与論島では未来に向けた取り組みが着実に進んでいると感じました。40代前後のUターン人材が戻り、『与論高校はなぜ定期考査と朝課外をやめたのか―改革を実現した学校マネジメント』のような教育改革、起業家を育てる「与論イノベーんちゅ」、海岸63ヶ所でのごみ拾いとごみ箱設置を行う「うんじゃみ」など、長い時間軸での変化を見据えた活動が広がっています。

特に、ごみ拾い活動を始めた方が「1人の100歩より、100人の1歩」という考え方で自らは3年で退いたという話は象徴的でした。活動を“自分のもの”ではなく、みんなが続けられる仕組みとして残す。島の文化や社会の特性を踏まえたアプローチであり、日本らしい合意形成の強みを活かした姿勢だと感じました。

結局、人は自分に関連すると感じられない限り、本気で動けないものだと思っています。与論島の歴史、地形、課題、そこで生きる人々の営みに触れ、自分自身の人生や仕事、そして社会への関わり方について考え直す時間になりました。この学びを、これからの活動や価値提供につなげていきたいと思います。

今週もよろしくお願いします。

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