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メルマガ:203 th 台湾・香港出張──信頼が世界をまわしている ― ファミリーオフィスの舞台裏から

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【目次】

  1. 今週の一言/モノリスの活動日記

こんにちは。門垣です。

先週は上海を後にし、台湾、そして香港へ向かいました。

サッカー日本代表のブラジル戦はリアルタイムで見られませんでしたが、36年越しにサッカー王国を破ったというニュースにはサッカーファンとして、胸が熱くなりました。

改めて思うのは、日本の強みはやはり粘り強さと組織力にあるということです。世界のクラブで経験を積む選手が増え、個の技術も磨かれていますが、それ以上に、日本人特有の連携と献身、全体で成果を生み出す力が光った試合でした。ビジネスの世界でも、少子化で採用難が続きますが、このようなチームワークで成長する姿でありたいものですね。

さて、台湾や香港を訪れ、いくつものファミリーや企業と打ち合わせを重ねました。帰国後の週末には海外からのゲストと会食。ここ最近は、ほぼ毎週のように世界中から日本に来客があり、日本という国の存在感が再び高まっているのを実感します。

今回の出張で、改めて感じたのは、世界の大きなファミリーやファミリーオフィスには、人・情報・案件が自然と集まってくるということ。そして彼らは、それらの資産や知識を互いに共有し、教育し合いながら、全体として成長しているということです。

たとえば、今回打ち合わせをした香港の著名なファミリーオフィスは、アジア各国の富裕層ファミリーに対し、ファミリーオフィスの運営方法や家族ルールの作り方、運用チームの整え方などを教えていました。対象は資産規模が最低500億円以上のファミリーです。彼らにとってこの活動はボランティアのようなものですが、将来的には共同投資や情報共有を通じて、強固なエコシステムを形成することが狙いです。

魅力的な案件があった場合、自分たちで20億円を投資するだけでなく、ネットワーク内の他のファミリーが10億円を拠出することで、規模の拡大とリスク分散の両立を図る。どのファミリーがどの領域に投資しているかを把握しているため、互いの信頼のもとで資本と情報が循環しています。

一方で、企業が事業拡大や資金調達を目指すとき、影響力のある経営者やその道の専門家に相談することが多いように、ファミリーの世界でも同じ構造があります。

長期にわたり誠実に事業に向き合い、信用を積み重ねてきたファミリーには、人と情報、そして資本が自然と集まります。複利的に蓄積された信頼が、新しい機会を引き寄せる力になっているのです。

また、大きなファミリーほど情報網を持っています。どの地域のどのファミリーがどんな領域に注力しているかを理解しており、自ら関心のない案件であっても、他のファミリーを紹介するような関係が築かれています。

今回の出張でも、中国の経営者でアメリカに拠点を構えるテックユニコーン企業と面談する機会がありました。彼らは最終ラウンドの資金調達を計画しており、投資家候補には中国の有力企業を想定していました。そこで、私の知る中国の大手ファミリーがAIやテクノロジー領域への投資を検討していたことを思い出し、両者を紹介したところ、すぐに面談が行われたようです。中国とは直接関係のない私が、中国人同士を結びつけるという少し不思議な紹介でしたが、こうしたことが起こるのも、ファミリーオフィス同士のエコシステムが機能し、情報が流通しているからこそです。

そして、ファミリーの裏側には、信頼できる“情報供給者”が存在します。ときには、元外交官や政府情報機関の出身者、あるいは今回出会った人は、父親が戦時中に国家間の武器の取引を担っており(密輸ではないです)、人との信頼構築や情報を内密に共有することを得意として生業とした、表には出ない情報を扱うプロフェッショナルたちもいました。

彼らは人との信頼を基盤に、慎重に情報を共有し、ファミリーにとって価値のある情報を提供しています。6月に訪れたフランスでは、PEファンドのIR担当者が元外交官というケースもありましたし、ヨーロッパのある国で訪問した情報分析会社は、社員の8割が元情報機関出身で、ビルの奥の地下にオフィスを構え、壁一面に人や企業、国家の関係をマッピングしていました。国家レベルの分析を民間の情報ビジネスに転用しており、その光景は非常に印象的でした。彼らはファミリーとの信頼関係を維持するために、情報源が確かな一次情報しか扱わない。鮮度と真実性が命です。

そして最後に、最も多くの情報を持つのは、ファミリーに仕える側近や右腕です。新しい案件はまず彼らに届き、必要があるものだけが意思決定者のもとへ上がります。世界のビジネスの裏側では、情報が静かに選別され、磨かれ、届けられていく。そこには見えない信頼の網と、長年築かれた関係資本が息づいています。

世界はこのようにして回ってるんだなぁと改めて感じた一週間でした。

今週もよろしくお願いします。

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