メルマガ:199th 「日本というだけで得をする―半導体・AI競争と欧州ファミリーの視点」
【目次】
- 今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
先週はアジアやヨーロッパから様々なゲストが来日し、週末も含めて打ち合わせやアテンドが続きました。毎回感じていますが、改めて、日本という国はもともと世界からの印象が良く、それだけで得をする場面が多いと思いました。文化としても、国のアイデンティティとしても評価が高く、話題を振るだけで相手の関心を引ける。日本であること自体がプラスに働くのは、非常にありがたいことだと思います。
精密な製造業やものづくり、アニメやキャラクターを通じたストーリーテリング、そして寿司・天ぷら・焼き鳥・ラーメンなどの食文化。お好み焼きの受けもかなりいいでので個人的にはよく連れていきます。
どれも世界で通用するクオリティがあり、「日本」というブランドが強い理由を再確認しました。江戸時代の鎖国の歴史の中で熟成した文化が、今もなお深みを増し続けているのだと思います。
半導体やAI産業に関わる台湾のファミリーとの会話では、アメリカと中国をめぐる半導体の話題になりました。彼が語っていたのは、中国企業の実情です。半導体やデータセンター、ロボティクスの分野で力を伸ばしていても、「中国企業」というだけで各国から規制や牽制を受ける。そのためシンガポールなどに新会社を設立し、本社機能やWebサイトまで移してリブランディングする動きがあるそうです。取引や資金調達の自由度は増すが、拠点移動によって利益率が下がるケースもあり、一長一短。そのバランスに経営陣は頭を悩ませているとのことでした。
台湾については、半導体産業は確かに強いものの、原発停止による電力供給の弱さが課題で、大規模データセンターは作れない。結果的に他国に依存する構造になっているため、台湾のファミリーはデータセンター投資を国内ではなく海外に行うことが一般的だそうです。
また、台湾の中堅企業についても興味深い話がありました。中国や他国の技術進歩で立場は厳しくなっているが、Nvidiaのジェンソン・ファン氏がまだ小規模だった頃に支えていた台湾企業は多く、彼はいまもその恩を忘れず仕事を発注しているとのこと。合理的に見える産業の中に、東洋文化らしい、義理や恩義といった非合理の人間的要素が息づいていることを実感しました。
日本を見れば、半導体素材分野の強さや技術力に加え、輸入依存ながらも原発を活用してデータセンターを作れる。台湾と似た条件を持ちながら、地政学的リスクは比較的低い。大胆な投資や海外展開の力さえ伴えば、日本は再び存在感を取り戻せるのではないかと感じますね。
一方、複数の欧州ファミリーとも会いましたが、彼らとの対話では異なる視点がありました。彼らは歴史的な側面や思考の違いから、アメリカを好まない傾向があり(もちろんそうでない人達も多くいると思いますが)、投資戦略も独自色が強い。とあるファミリーは「AIは確かに盛り上がっているが、アメリカのコンテンツはもう力を失った。日本が圧倒的だ」と語り、ディズニー株をショート(空売り)している話もありました。
また別のファミリーは「私たちが重視するのはAIや半導体ではなく、暮らしに根ざしたライフスタイル分野だ」と話しており、日用品、食、観光、教育といったテーマが投資対象になっていることが多いです。
保守的というか、固いといいますか、AIのように確実に成長はしていくものの、不確実性が高いものよりかは、成長性や利益率が劣ったとしても、人々の生活に密接する必要不可欠なビジネスを好む傾向があると思います。
国や地域の文化や歴史、そして現在の地政学的背景によって、将来の世界観や投資先がまったく異なる。日本の「好印象」や「得をする立場」を再認識しつつ、それぞれの違いを体感できた一週間でした。
今週もよろしくお願いします。