メルマガ:198th 「モノリス新メンバー2名 / 覇権のゆらぎと中国の次なる展開」
【目次】
1. 今週の一言/モノリスの活動日記
こんにちは。門垣です。
今月から新しい仲間が2名加わりました。運用責任者として田中、技術顧問として殿崎さんです。運用チームを強化するとともに、社内オペレーションの自動化や付加価値サービスの創出にも力を入れていきます。
田中 康之
運用責任者/Chief Investment Officer
シティバンク、モルガン・スタンレー、UBSなどグローバル金融機関など金融業界での経験38年以上。為替取引や債券、金利スワップのディーラーの他、外国株、日本株の機関投資家向け営業部長職を経て、運用会社スパークスアセットマネジメントに移籍、エグゼクティブ・ディレクターとしてアクティビストファンド、中小型株式ファンドの運用業務にアナリストヘッドとして従事。モルガン・スタンレー在籍時には、ニューヨーク本店にて数年にわたり機関投資家向け米国株式営業に携わった経験を持つ。バイサイド・セルサイド両面での経験を活かし、UBSでは富裕層向けマルチアセット資産運用アドバイザーを務める。また、シンガポールのファミリー・オフィスにおいてDirector、CIOを務めた。2021年、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社。株式専門の営業部隊の構築にチームヘッドとして参画、様々な投資の知見の発信とチームの人材育成に取り組んだ。2025年当社に参画。
殿崎 俊太郎
技術顧問/Technology Advisor
慶応義塾大学理工学部情報工学科卒業、同大学院修士課程修了。 大学在学中に株式会社ライトマークス設立し、ソフトウェア開発事業を展開。その後ゴールドマン・サックス社テクノロジー部を経て、Uber Japan 社第1号社員として事業の立ち上げと拡大、収益性改善を牽引。 2018 年、ライトマークス代表取締役就任。2025年より、当社とライトマークス社の事業提携に伴い当社技術顧問として参画。
プロフィール写真
https://monolith-holdings.com/team/
さて、今週も国内外のファミリーとの多くの出会いがありました。週末には、とある大手中国ファミリーのメンバーと会食。昔は中国の方と政治の話をすることは少なかったのですが、最近はビジネスと政治が一体となって語られることが当たり前になっています。民間経営者の中には、政府に協力しつつも自らの意見をはっきり述べる人が増えていると感じます。
その背景には、中国政府の覇権主義的な考えがあります。最近は中朝ロの首脳が集結したり、軍事パレードを実施するなど、覇権国家アメリカやその他の国々に対する牽制、そして世界に対して力を誇示する動きが目立ちます。世界秩序そのものが揺らぎつつあるようにも映ります。
今回の会食で彼らの話を聞き、私なりに解釈すると、これまでの「国進民退」から方向を転換しつつある印象を受けました。国営企業の成長余地が限られるなか、今後は規制セクターへの民間の参入が進み、自由経済への解放が加速する可能性がある。ただし中国らしく「民間に任せる」のではなく、「習近平からやってくれと依頼される」形に近い。強制か自由かは曖昧ですが、いずれにせよ民間の力が官僚的な産業に入り込むことで、一気に成長する余地を秘めています。
余談ですが、今年2月に6年ぶりに開催されたシンポジウムでは、その界隈では、参加者や参加者の席順が注目されたと聞きました。誰がどこに座るかによって、政府がどの企業を信頼していて、重要人物なのかが分かる。そしてそうした企業は銀行からの融資において圧倒的に低い金利を享受できるようです。実は今回会ったファミリーも、そのシンポジウムに呼ばれていた企業のひとつであり、彼らの立ち位置も改めて理解することができました。
参加したと言われているリーダー陣
氏名 | 所属/企業 | 備考 |
Jack Ma(馬雲) | Alibaba(アリババ) | 過去の規制のターゲットになっていたが、この会合で久しぶりに公の場に登場。 |
Ren Zhengfei(任正非) | Huawei(華為技術) | 通信・ネットワーク技術の分野での代表的企業。 |
Lei Jun(雷軍) | Xiaomi(小米) | スマホメーカーからEV参入など展開中。 |
Wang Chuanfu(王伝福) | BYD(比亜迪) | 自動車(電気車)・バッテリー分野。 |
Zeng Yuqun(曾毓群/Robin Zeng) | CATL | バッテリー大手。 |
Pony Ma(馬化騰) | Tencent(テンセント) | ゲーム・ソーシャルメディア・クラウド等。 |
Wang Xingxing | Unitree Robotics | ロボティクス分野。 |
Yu Renrong | Will Semiconductor | 半導体(ファブレス)企業。 |
Wang Xing | Meituan(美団) | 配送・プラットフォーム系。 |
Leng Youbin | China Feihe | 乳製品(粉ミルクなど)や農産品関連。 |
Liu Yonghao(劉永好) | New Hope Group(新希望集団) | 飼料・畜産など農業関連企業。 |
Liang Wenfeng | DeepSeek |
一方で、中国経済には構造的な課題も残ります。一人当たりGDPは先進国の半分程度で、高齢化率も15〜20%とアメリカと並ぶ水準。さらに1979年の一人っ子政策の影響で、人口構造の厳しさは日本とよく似ています。
ただし注目すべきは第二世代だと思っています。改革開放後に財を築いた起業家の子供世代が事業承継を進め、多くはアメリカやイギリス、カナダで教育を受け、中立的かつ国際的な視点を持っています。先日来日した中国のファミリーオフィスもその一例。電化製品関連の製造業で財を成した一族でしたが、承継後は全く異なる分野へ投資を進めており、世代交代によるダイナミックな変化を一次情報として実感しました。
海外への資金持ち出し規制は依然として存在しますが、徐々に制度は整備されつつあります。AIやデジタルに積極投資する姿勢、そして第二世代の柔軟な価値観を考えると、中国経済は多様化しながら新たな飛躍を遂げる可能性があります。アメリカを超える経済大国へと成長する未来も、決して絵空事ではないのかもしれません。
今週もよろしくお願いします。