メルマガ: 105th 「米国経済の分かれ道 プライベートバンクとの面談、キャリ‐取引運用」
【目次】
1.今週の一言/帰国
2.モノリスの活動日記/プライベートバンクとの面談
3.記事にコメント//キャリー取引、モルスタマネロン、香港富裕層強化、日本政府の戦略
4.金融コラム/S&P 米国経済の分かれ道。米国株は年末に向けて上昇/下落するか
1. 今週の一言/帰国
こんにちは。門垣です。
週末に日本へ戻ってきましたが、非常に学びのある有意義なシンガポール出張になりました。
金融とは別に、シンガポールのMeta(旧Facebook)で働いている友人に、オフィスツアーをしてもらいましたが、優秀な人を雇用するための福利厚生がものすごかったです。
シンガポールオフィスはアジアの本社になりますが、
-朝、昼、夜の食堂(東アジア、東南アジア、洋食等の食堂がそれぞれあります)が毎日それぞれ3回入れ替わる。有名なホテルのシェフを雇用
-飲み物やスムージー等もカフェ以上の種類を完全無料提供
-キーボードやイヤホンなどの電化製品も自動販売機で無料提供
-出社時間も自由で、今は週3回の出社でOK、服装も自由
-副業もOK(条件によるが)
MetaはFaceBook、 インスタグラム、What’s App、 Thereads などを展開しており、
おそらく世界で一番個人情報を持っている会社でしょう。
そのせいもあってか、なによりも、給与がかなり高いです。インフレの考慮があり、基本給だけでも毎年10%は上昇しているようです。
金融業界よりも高いので、びっくりしました。
やはりテック企業の成長は著しいですね。
(オフィスロビー)

2. モノリスの活動日記/プライベートバンクとの面談
結果的に、プライベートバンクに関しては、12社と面談をしてきました。
米系(3社)、欧州(6社)、アジア(3社)です。このうちの約半分は日本人の担当者がいました。
基本的なサービスはどこも似ていますが、各社ごとに特徴(強み/弱み)が
異なります。細かい部分を知れて収穫ありでした。
富の集まるシンガポールのプライベートバンクは根本的に
日本のサービスとは全く違います。日本にはプライベートバンクといったプライベートバンクがほとんどないため、なかなか比較することさえも難しいですが。
また、シンガポールには日本人で、日本株のヘッジファンドを運営している会社も多く、
盛り上がっていました。日本はまだ見捨てられていない、と思うこともできました。
3.記事にコメント/キャリー取引、モルスタマネロン、香港富裕層強化、日本政府の戦略
キャリー取引が救世主に、不振の為替ファンドのリターン大きく改善
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-08/S3T42UDWRGG001
低金利の通貨のお金を借りて、高金利の通貨の資産を買い、運用益だけではなく金利の差
を獲得する取引を【キャリー取引】というが、今年はこのキャリー取引戦略を活用した運用のパフォーマンスが良い、との報道。具体的には、世界中どこをみても日本だけがダントツで低金利であるが、この日本円を借りて、ドルなどの高金利通貨を買う動きがみられる。
今年の弊社の運用戦略もキャリー取引が入っているが、世界のファミリーオフィス(富裕層の資産を運用する会社)も同様の取引を多くしていると、シンガポール出張で話を聞いた。
どのような資産を購入するか、は運用会社の戦略によって異なるが、基盤はどこも同じである。
主要国 政策金利一覧

(出所:Bloomberg)
モルガンSの富裕層資産運用部門を米が調査、マネロン巡り-関係者(英語)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-08/S3TV2PDWRGG001
銀行の収益の半分を占めるプライベートバンク部門に、FRBの調査が入った、との報道。調査の焦点は、顧客のマネーロンダリングを十分に防ぐための対策を講じていたか。
前回のメルマガでも言及したが、このような事件、調査、ニュースが出回れば、
よりプライベートバンクの口座開設の審査は厳しくなる。
どこの会社もコンプライアンス部門の人は多くはいないため、需要に応じて供給があってない。今後もますます厳しくなるだろう。
香港が富裕層を惹きつけるあらたな施策を打ち出す(英語)
香港は、富裕層金融市場を取り戻すために、先週木曜日に、香港富裕層アカデミーを設立した、との報道。不動産王として知られる新世界発展(ニューワールドデペロップメント)のCEOかつ超富裕層であるエイドリアン・チェン氏が会長に就任し、大手不動産デペロッパーのSino Landの副会長が理事会メンバーに参加するなど、豪華なメンバーで構成されている。シンガポールは、2020年にはファミリーオフィス(富裕層の資産を管理・運用する会社)は400だったが、政治の安定と金融規制の緩和により昨年末には1,100にも達し、香港を
引き離そうと、勢いをつけている。これに負けないように、香港も規制や移住の緩和を促進するという。香港は引き続きアジアの金融都市であるが、政治面で不安定な状況が続き、
多くの人と富がなくなった。本当に寂しい状況が続いているという。
金融庁、資産運用の参入を容易に、管理部門なくても可能
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB269HC0W3A021C2000000
日本の金融庁が資産運用と資産管理業務の分業を促進させ、資産運用立国を目指す、との報道。
これまで運用会社は、運用業務に加え、コンプライアンスの管理、投信の基準管理、月次報告書の作成等、いわゆるバックオフィス業務も行う必要があった。これが障壁となり、日本には特色のある運用専門の会社がうまれる、あるいは進出することが少なかった。バックオフィス業務を構築するだけで相当な労力やコストがかかるからだ。
海外では、昔からこの制度が充実しており、多くの独立型の資産運用会社が存在する。このような方針が出たことはとてもいいことだが、これに加えて税制面の緩和をしなければ優秀な運用会社は日本に入ってこないであろう。
4.金融コラム/ 米国経済の分かれ道。米国株は年末に向けて上昇/下落するか。
さて、今年も残すとこ2ヶ月となりましたが、
コロナの終焉による消費の拡大、新たな戦争の台頭、各国中央銀行の政策等、
あらゆるイベントが金融市場を動かしています。
世界経済の中心である米国に関しては、
先日格付け機関のムーディーズ・インベスターズが
米国格付けの見通しを【ステーブル(安定的)】から【ネガティブ(弱含み)】に引き下げました。
格付け自体は以前と変わらず、「Aaa」を維持していますが、
財政力に対する懸念や来年控える選挙を理由に、不安定な状態が続いていることから、
見通しが変わったとされています。
米国の債務残高は年々増え続け、現在は約25兆ドル(約3700兆円)にも達しています。
ちなみに年間の名目GDPは約26兆円です。金利上昇により債務の増加や財政赤字も引き続き見込まれることから、債務償還能力は圧迫されています。
米国債務残高合計の推移

(出所:Bloomberg)
ちなみに日本が11%保有しています。米国国内では約53%です。

(出所:Bloomberg)
さて、このような状況をうけて、一部の強気な株ストラテジストが米国株に対して、
下方修正を行っています。
今回は、過去3年分のストラテジストのS&Pの予想値(予想値)と年末株価の実績値を
集計してみました。母数は約20-23社です。

2020年、2021年は予想値に対して、年末の値が上振れし、6%~12%の上昇になっています。一方で、昨年は予想値が4054に対して、実績は3860でした。
今年の予想値は、4,370です。現在の株価が4,415であるため、予想でいうと約1%下落することになります。
さて、実際はどうなるのでしょうか。
年末にも振り返ってみたいと思います。
今週も宜しくお願い申し上げます。