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メルマガ: 167th 「コミュニティ懇親会  DeepSeekショック解説」

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【目次】

1. 今週の一言/モノリスの活動日記/懇親会

2. 金融コラム/Deepseekショック解説


1. 今週の一言&モノリスの活動日記 / 懇親会

こんにちは。門垣です。

先週、既存のお客様や弊社に関心を持っていただいている方々6名にご参加いただき、 食事を交えた小規模な懇親会を開催しました。

運用担当者を含め、【株式投資】をテーマに掲げ、 円卓を囲みながら中華料理を楽しみつつ、意見を交わしました。

経済や政治、株式市場の動向に加え、 弊社が提供する日本株ヘッジファンド型戦略(日本株を対象とした買いと空売りの運用助言)について、多角的な議論が展開されました。

リラックスした雰囲気の中で進行したため、 普段の打ち合わせやチャットでは伝えきれない、 よりリアルタイムで鮮明な情報が行き交い、 話の肴としても楽しめる場となりました。

さらに、このような集まりの醍醐味は、 お互いの事業について深掘りできる点にもあります。

「そんなビジネスモデルがあるのですね!」

「ぜひ後日、詳しくお話を聞かせてください。」

こうした会話を通じて、お客様同士がつながり、 新たなアイデアや価値が生まれる瞬間を目の当たりにし、 個人的にも大きな刺激を受けました。

ふと、創業前の2021年4月に策定したモノリスの理想像を振り返ると、 そのビジョンが少しずつ具現化されつつあることを実感します。

2021年4月 事業構想資料より抜粋

この理想を形にするために、 最新のサービス構成は以下のようになっています。

2025年 国内向けサービス概要

懇親会の締めくくりには、

「米国株の運用助言サービスをぜひ提供してほしい」

「財団の設立や運営に関する基礎知識や事例をテーマにした懇親会を企画してほしい」

「各ビジネス分野をテーマにした交流会を定期開催してほしい」

といった貴重なご意見をいただきました。

ハーバード大学が75年間にわたる研究で導き出した結論の一つに、「幸福と健康をもたらす最大の要因は、良質な人間関係である。」というものがあります。

https://president.jp/articles/-/45510?page=1

モノリスもこの考えに共感しています。

今年は、つながりを生む場をさらに増やし、新たな価値の共創を加速させていきます。

ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

2. 金融コラム / DeepSeekショック解説

先週、金融市場で”Deepseekショック”が起きました。半導体関連企業30社で構成されるフィラデルフィア半導体指数は1週間で6.1%下落し、NVIDIAの株価は15.81%も下がりました。今回は、その背景や現状について、一次・二次情報を交えながら考察してみます。

背景

今回の件の背後には、2019年に浙江大学を卒業したエンジニアが設立したヘッジファンド”High-Flyer”があります。創業者のLiang Wenfeng(リャン・ウェンフォン、39歳)は、AIを活用して株式市場で利ざやを狙う少数精鋭の理系金融集団を率いています。

2021年にはNVIDIA A100 GPUを1万台使ったコンピューターシステムを作りましたが、ヘッジファンドの結果が成功だったのかどうかは微妙なようです。

その後、2023年に杭州市でAI研究を目的とした子会社Deepseekを設立しました。

2024年5月には大規模言語モデル”Deepseek-V2″を発表し、その開発コストの低さが話題になりました。今年1月20日には最新モデル”R1″の開発費用が約560万ドル(8億円)だったと発表されました。

OpenAIが2023年末に発表したモデルの開発費(1億ドル=155億円以上)と比べても圧倒的に低コストで、しかもOpenAIの最新対話型AI”o1″に匹敵する性能だと言われ、市場に衝撃が走りました。これを受けて、AI関連企業への期待感が後退し、投げ売りが起きたのです。

フィデアラルフィア半導体指数

(出所:Bloomberg)

本当に開発コストは安いのか? 今回の論点

この開発コストの安さには、多くの疑問が投げかけられています。

① 開発手法

OpenAIは、莫大な数の半導体を投入したデータセンターを構築し、膨大なテキストや画像データを使ってAIモデルを訓練しています。

一方、Deepseekは”蒸留”と呼ばれる技術を使ったとされています。蒸留とは、巨大なモデルの出力結果を利用して、小さなモデルを効率よく訓練する方法のことです。つまり、DeepseekはOpenAIのモデルを活用して、自社AIを改良した可能性が高いです。この点がOpenAIの利用規約に違反している可能性があり、問題視されています。

「第126号 週刊モノリス 番外編 中国出張チャイニーズエコノミー」でも書きましたが、昨年杭州に行きました。そこでテックや金融関係者との交流ができたのですが、そのうちの一人がDeepseekと繋がりがあり、今回の件について会話をしました。

蒸留の有無ははっきりしないものの、ChatGPTのデータベースを活用している可能性は高いと感じました。

② 先端半導体の活用と輸出規制の抜け道

2022年、米バイデン政権は中国への半導体および製造装置の輸出を規制しました。Deepseekは2021年にNVIDIAのA100 GPUを1万台購入して開発を進めていましたが、その後NVIDIAは中国向けに規制を回避したより高性能のA800やH800を開発しました。しかし、これらも輸出禁止となりました。

一部の情報では、Deepseekがシンガポール経由でH800やその他の高品質の半導体を購入し、活用しているという話があります。以下のグラフを見ると、NVIDIAの国別売上推移で、アメリカ(黄色)以外では、シンガポール(青色)が急成長しているのがわかります。アメリカの約半分の売上がシンガポールで計上されています。シンガポールは金融・サービス業が盛んながら、テック分野はそこまで大きくないため、Deepseekがシンガポール経由で半導体を調達している可能性は十分にあります。

NVIDIAの国別売上金額推移

(出所:Bloomberg)

今後の展望

開発コストや生産性の妥当性が議論される中で、一番重要なのは「優秀なエンジニアがいれば、低コストでAIを開発できる時代になっている」ということです。さらに、Deepseekのモデルはオープンソース化されているため、今後は世界中の企業が低コストでAIを活用できる環境が整っていくでしょう。

結果として、データセンターや半導体市場の成長率は鈍化するかもしれませんが、こうしたインフラがなくなることは考えにくいです。

今月は台湾に行き、半導体やサプライチェーン関連の企業のオーナーと会う予定です。このあたりの仮説を持ちながら、聞き込みを行っていきたいと思います。

Deepseekの今後

杭州の関係者と話をする中で、Deepseekは今後、人工汎用知能(AGI)の開発に注力していくのではないかと感じました。少数精鋭の組織ではありますが、競合にはTikTokを運営するByteDanceのような巨大IT企業がいます。どれだけ優秀な人材がいても、資本力の差で押しつぶされるリスクは避けられません。

だからこそ、特定業界向けのソリューションを作るより、AIモデルの精度を高めることにフォーカスしつつ、創業者のバックグラウンドを活かして金融分野、特にヘッジファンドや資産運用への応用を進めていくと考えています。

DeepseekのようなAIファンドが多くなると、金融市場が均一化されていくことも想像できますが、人が介在する以上は、金融業界には歪みが生じ続けます。なぜなら、人はその時の心情や状況によって、心理的要素が入り、教科書通りのセオリーではない取引や、投資を間違えたりすることがあるからです。

このような間違いや違いが多発すればするほど、AIも相場を読み間違えることもあると予想しています。しかしながら、いずれにせよこのような心情でさえもAIが読み取る時代がくるでしょう。

AIビジネスの未来

正直なところ、今のところAIを使って儲かるビジネスはまだあまり出てきていません。GAFAなどの大手企業は巨額の投資をしていますが、まだ大きな収益にはつながっておらず、儲かっているのはNVIDIAやサプライチェーン関連企業だけです。世界中のスタートアップがAIを活用したサービス開発に挑戦していますが、こうした企業に投資しているのも結局は半導体関連企業。自社の製品が使われる構造を作っているに過ぎません。

とはいえ、AIの進化やAGIの到来はもう目の前です。特に少子高齢化が進む先進国では、ロボットやAIの活用が課題解決のカギになってくるはずです。10年前からずっと思っていることですが、いつかスター・ウォーズみたいな世界がやってきます。人間とロボットが共存し、宇宙旅行が日常になる——そんなワクワクする時代が、もうすぐそこまで来ていると思います。

(ウェブサイトより抜粋)

今週もよろしくお願い申し上げます。

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