ポッドキャストはこちら

メルマガ: 157th 「世界のファミリーオフィスはセカンダリー市場へ/巨額の投資/またまた福岡」

メルマガ

【目次】

1. 今週の一言/またまた福岡

2. 富裕層の公然の秘密/ 世界のファミリーオフィス事情


1. 今週の一言 / またまた福岡

こんにちは。門垣です。

先週は東京で明治神宮に行き、

週末から福岡に移動し、ヨーロッパのファミリーオフィスの人と大宰府へ。

忖度なしで、【日本】というだけで世界の人々から贔屓にされ、決して嫌がられることのないこの国のソフトパワーはどれだけ凄いのか、と感心する毎日です。

街を歩いても海外と比較してものすごく綺麗で、
電車は時間通りに発車し、食事は何を食べても美味しく、歴史があり、文化やエンターテイメントが豊富で、本当にどれだけ恵まれているのか。

と何回も心で感じた一週間でした。

2. 富裕層の公然の秘密/ 世界のファミリーオフィス事情

世界のファミリーオフィスが1,400億ドル規模の未公開株セカンダリー市場に殺到

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-11-14/family-offices-flock-to-140-billion-market-for-secondary-sales

近年、世界のファミリーオフィスがセカンダリー市場への投資に注目していることについて言及している記事です。

未公開株のセカンダリー市場とは、未公開企業の株式を既存の株主から他の投資家が購入する取引市場を指します。

これにより、既存株主は流動性を確保することができるメリットがあります。このような売買は、上場株投資では一般的に行われていますが、未上場企業投資においては、海外では盛んである一方、日本ではまだまだ発展途上であり、今後の成長が期待される分野です。

日本政府も「スタートアップ育成5カ年計画に向けた提言」を提出しており、5年後(政策提言から)には、国内のスタートアップ投資額が10倍を超える規模になるべく、様々な手を打っています。

また昨今のこのセカンダリー市場の活況は、【第153号 週間モノリス 番外編 フランス出張 活動内容ちらっと共有】で触れた、ワイン卸売会社が金利上昇の影響で資金難となり、在庫として保有する高級ワインを売却する流れと非常に類似しています。

未公開株式市場においても、エンジェル投資家やVCファンドなど、早い段階で投資をした投資家が現金を確保するために株式を売却する動きが強まっているのです。

記事では、具体例として米国の医療機器メーカーのメドラインを保有するミルズ家がフィンランドのバイオテクノロジー企業Medix Biochemicaに投資した事例が挙げられています。

同社は血液等の検査に使用される製品を提供する企業であり、ミルズ家がヘルスケア分野で築いた長年の経験を活かした投資といえます。

チャーリーミルズ氏

また、フランスのラグジュアリー企業持ち株会社ケリング(グッチ、サンローラン、ボッテガ、バレンシアガ等) の創業者であるフランソワ・ピノー氏のファミリーオフィスがハリウッドのCreative Artists Agencyの過半数株式を約70億ドルで取得しました。

CAAには、トムハンクス、ロバートデニーロ、ウィル・スミス、アルパチーノ、ニコールキッドマン等の世界的なスターが所属しています。

https://www.caa.com

フランソワ・ピノー氏

(ウェブサイトより抜粋)

CNBCが報じたFintrxのデータによると、2023年に世界のファミリーオフィスで最もスタートアップへの投資を行ったのは、暗号通貨取引所BitMEXの共同創業者Arthur Hayes氏が運営するファミリーオフィスMaelstromで、その投資先は22社に及びます。

こうした積極的な投資活動が、ファミリーオフィスの役割が単なる資産管理を超え、未公開市場における重要な資金提供者としての位置付けを強めていることを示しています。ちなみに、Maelstorm社はブロックチェーン関連企業に多く投資をしているようです。

Arthur Hayes氏

(Websiteより抜粋)

ファミリーオフィスは主に一族の資産を運用するため、意思決定の迅速さに加え、外部投資家が関与しないことから長期的な保有が可能です。この特性により、ファミリーオフィス市場の重要性は世界的に高まっています。

最近、個人的に感じるのは、世界の富裕層が持つ3つの資本

①圧倒的な金銭的資本

②広範な人的ネットワークの関係資本

③膨大な量の情報資本

を武器に、未上場企業への投資や買収を通じて企業価値を向上させて、売却やIPOの成功確率を上げていることです。

彼らは、単にお金に興味を持っているというよりも、自分自身や家族の夢や目標を実現、さらに社会の課題を解決するために、あらゆる手段を活用しながら遂行していきます。

週末から今週にかけてヨーロッパの超富裕層のファミリーオフィスと日本で時間を過ごしていますが、彼らも同様に成長ステージの未上場企業を買収/出資し、彼らのネットワークを駆使して売上・企業価値向上を図り、その後IPOではなく、世界的に有名な大企業に売却するような形で財を成しています。

もちろんIPOをさせる場合もあるみたいですが、自分達でできる最大限の企業価値向上支援を行い、次のステージにおいて自分達とは異なった強みのある企業に売却し、新しく引き受けた企業がさらに付加価値を加えて上場などをさせる循環を構築させています。

また最近では、日本市場でも、過去に高いバリュエーションで資金調達を行ったベンチャー企業が、現在の資金調達環境の厳しさから評価額を下げて調達するケースが増加しています。ときにはIPOを目指している企業が、その前に自社株を一部売却するケースも出てきています。

国内調達が難しい中で、海外投資家からの資金を求める動きも活発化しており、日本においても未公開市場におけるセカンダリー取引の重要性が高まっています。

弊社でも今月に入ってから数社の日本のベンチャー企業の資金調達依頼を受けていますが、売上や事業成長はしているものの、さらなるファイナンスが必要になり、日本の投資家がなかなか入れないケースもあるため、海外投資家へのアクセスを依頼されるケースが増えています。

日本の富裕層も従来の伝統資産(債券、株式等)から非伝統資産(不動産、未上場企業投資、プライベートデット、ヘッジファンド等)へ資産割合を増やしている傾向があるため、これからますます日本のセカンダリー市場も活性化しそうです。

今週もよろしくお願いします。

YOU MAY ALSO LIKE