メルマガ: 140th 「ジャパニーズウィスキーの現場と/富裕層の非伝統資産投資」
【目次】
1.今週の一言&モノリス活動日記/ ジャパニーズウィスキー
2. 金融マーケット/ 投資としてのウィスキー
1.今週の一言& モノリスの活動日記/ジャパニーズ ウィスキー
こんにちは。門垣です。
前回のメルマガで、鹿児島本島、離島の甑島に訪問したと書きましたが、
もう一か所行ってきました。
焼酎で有名な富乃宝山を製造する西酒造さんです。

西酒造の創業は1845年、会社設立は1958年、
現在は8代目で、とても歴史ある会社です。
西酒造さんですが、
【発酵するお酒を極めたい】という想いから、
2019年より 御岳蒸留所を構え、
昨年23年に初めてシングルモルトジャパニーズウィスキーを販売。

蒸留所から見渡せる御岳は、北岳、中岳、南岳の3つで構成されています。(正確には北岳が御岳のようですが)
一般的には、桜島と言われていますが、
薩英戦争を記したイギリスの書物には御岳の名前が登場しています。
下の写真は御岳を背景に、左手には樽を保管する倉庫、
手前には池があります。
ウィスキーの製造工程には、
仕込み水、冷却水、掃除をする水、と3つの水が使用され、1本のウィスキーをつくるのに、約120リットルの水が必要と言われているみたいですが、
実は、この池は使用した冷却水が貯められています。

この施設の下の敷地には、
広大なグリーンが整備されており、2026年にはプライベートゴルフクラブが開始されるようです。
このゴルフ場の芝を育成するために、水が使用されているようだとか。
基本的に、ウィスキーは焼酎は共に蒸留酒であり、製造工程が似ていますが、
麦芽のでんぷんを糖化させる際に、
ウィスキーは酵素を活用(酵母)。焼酎は麹を活用します。
また、蒸留の回数も異なるようで、
焼酎は基本的に1回のみですが、
ウィスキーは2-3回蒸留します。
下記写真左奥にみえる、銅色の機械は蒸留するためのものですが、2つあるのがわかります。
初留し、また再留することで、香り高い、コクのあるウィスキーに仕上がるようです。

この工程後にできあがった、樽に入れる前のウィスキーはニューポットと言われるようです。

(写真のグラスに入った白色のウィスキーはニューポット)
このニューポットを、シェリー樽にいれて、長い期間熟成させます。
一般的には、シェリーをいれた樽にニューポットを入れて熟成させますが(シーズニング)御岳蒸留所は、シーズニングしていない樽を活用します。
つまり、シェリーでならされていない樽を活用することで、樽ごとに、独特の風味が際立ちます。
この樽に名前を入れて、樽まるまる一つを販売されたりもしています。
これはプライベートカスクをも言われ、
この樽を購入したオーナーは、最低3年間樽を寝かし、
その後、自分で飲んだり、プレゼントしたり、あるいは販売することもできます。
何年熟成させるかにもよりますが、約600本ほど瓶詰できるようです。
また、オーナーの特権で、2026年オープン予定のゴルフ場の会員にもなることができます。
2. 金融マーケット/経済としてのウィスキー
少子高齢化により、成人一人当たりのアルコール消費量は1992年101,8ℓをピークに、2019年には78.2ℓと減少。
さらにコロナを経て、健康志向が強まり、
仕事を終えて、飲み会へ行くよりかは、
ジムで筋トレをしたり、ヨガをしたり、
サウナで疲れを癒したりするなど、
人々のアルコール離れが目立ってきている。

(出所 厚生労働省 わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移)
アルコールは、人々をほろ酔いにさせ、気分を高揚させ、嫌なことも忘れさせるマジック的な存在も果たしている一方で、
二日酔いになれば、頭の回転も遅くなり、仕事の生産性も低下させる。
適度な摂取をすれば、病気にも繋がることもある。
この20年間は、消費量が減少するとともに、
物価も下落。
しかしながら、今年4月より、我が国の代表飲料メーカーである
サントリーが、ブランド向上や品質改善を目的に大きく値上げしたことにより、ウィスキーの物価指数は、
他のアルコールと比較して大幅に上昇した。
アルコール飲料の消費者物価指数。(200年を基準)
白:ウィスキー
青:ビール
オレンジ:焼酎
紫:インポートワイン
黄色:酒

(出所:Bloomberg)
今年の4月にKPMGがウィスキー投資についてレポートを配信した。
https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/ie/pdf/2024/04/ie-whiskey-club-paper-v11.pdf
世界のウィスキー市場は、$70 billion(約11兆円)であり、2032年には$125 billion(約20兆円) になると発表されている。
同社が200人の富裕層を対象に行ったアンケート【3年以内に投資検討する非伝統資産】では、
1位不動産、2位暗号通貨、3位ゴールド、4位コモデティ、5位にウィスキーがランクインしている。

懸念点として、ウィスキーへの投資戦略やリターンの知識の欠如が目立っているが、
投資方法としては、現物ボトルを購入するか、あるいはカスクを購入する戦略のいずれかになる。
弊社が調べたところ、ウィスキー投資のETF等といった金融商品はまだでていないが、将来的はローンチされると予想している。
ウィスキーの中でも、スコッチがダントツで投資対象となっているが、ジャパニーズウィスキーも世界から注目が集まっているようだ。

ちなみに先日聞いた話だが、
日本のとあるウィスキーカスクを購入した人が、
瓶詰めして販売したところ、一本当たりの原価の4倍の価格で売れたそうだ。
仮に、100万円でカスクを購入。
3年間熟成させたあとに、半分売却して200万円の収益。その翌年、同金額で半分売却できたとすると、
管理コストは省き、IRRでは49%のリターンになる。
KPMGのレポートでは、アイリッシュウィスキーの樽は、5年間の期間で年間10%以上のROI(Return on Investment)を達成しているようだ。出口戦略としては、ブランド、コレクター、ボトラー、オークションなどが主流と言われている。
もちろん、ウィスキーの過剰供給、倉庫の火事などのよる損害、サプライチェーン、流動性等はリスクになる。
世界的にインフレーションが進行していく中で、
大統領選を控えていく中で、
今後はより一層オルタナティブ資産への資産配分が増えていくだろう。
今週もよろしくお願いします。