メルマガ: 50th 「みずほと楽天証券が示す未来:モノリス視点の業界考察」
【目次】
1.今週の一言/ 忖度なし、一言の勇気
2.モノリスの活動日記/みずほ・楽天証券
3.富裕層の公然の秘密/封じられる配当節税
4. 金融コラム/ソフトバンクの猛攻
1.今週の一言
こんにちは。門垣です。
今週は名古屋と三重出張。香川名物の骨付鶏ですが、三重四日市も美味しいと噂を聞き、【骨付鶏かもん】へ。
スパイスのきいたソースとやわらかジューシーな雛鳥は、手頃な贅沢でした。

週末は、ゴルフと読書。
【日本マクドナルド 挑戦と変革の経営】
今年で50周年を迎える日本マクドナルドですが、300名以上の日本人の中から、唯一レイ・クロック氏に任された藤田田氏は、
「私に任せるのなら、日米の出資比率は50対50対でいきたい。もちろん、社長は日本人。そして利益はアメリカに持ち帰らず、日本で再投資。アドバイスは受けるが、オーダーは受けない。どうですか」
と答えたようです。
この一言を言える勇気があるか、ないかで、ビジネスや世界が大きく変わるんだなぁと、想像できたものは、必ず創造できるんだなぁと、
強く感じた一週間でした。
2. モノリスの活動日記
みずほ、デジタル巻き返し、7年ぶり大型投資は楽天証券
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB06D0C0W2A001C2000000
みずほ証券が、約2割出資(約800億円)を楽天証券にする、という報道です。
楽天としては、モバイル事業の資金繰りを改善するための、苦渋の決断でしたが、デジタルを強化したいみずほ証券としては、ラッキーな話が転がり込んできたと、思っているでしょう。
大手証券会社は、システムの導入、構築、管理の執行を子会社が行っているケースが多く、証券幹部もデジタルに疎い人が多いです。そのため、情報共有を怠っている場合、いつも導入や管理の失敗が多発しており、なかなかデジタル化が進みにくい体制になっています。
一方で、楽天証券は、小回りが利くサイズであり、比較的若く、デジタル出身の方が、本社に所属しているため、ネット証券を運営するにあたってのデジタルインフラをスピーディー、かつ効率的に構築することができます。
だからこそ、デジタルに強くない幹部がデジタル投資の意思決定をするよりも、すでに整備されている楽天証券自体に投資をして、みずほ証券のウェルスマネジメントのノウハウを共有すれば、合理的で、価値ある投資になると思います。
現在モノリスでは、世界では主流であるが、まだ日本にはそこまで浸透していない富裕層運用アドバイスサービスのデジタルインフラ未来予想図を白紙の状態から描いています。
大手金融機関と比較して資本が少ない中、いかに効率的にインフラを構築し、お客様に一流のサービスをお届けできるか、が鍵となります。
お客様には見えない影の部分ですが、バックオフィスをしっかりと構築することで、サービスの質と利益率が向上し、さらに浮いたお金を再投資することで、お客様によりよい選択肢を提供することや、比較的安価で、価値あるサービスを創造することができます。
現段階ではモノリスのアドバイザーサービスの料金は、同業の約50%安く、その分、お客様の資産が増えるような仕組みにしていますが、まだまだ課題も多く、これからが本番ですね。
3. 富裕層の公然の秘密/封じられる配当税
9/5 第45号のメルマガにて日本の所得税の抜け穴
(給与所得と事業所得の損益通算)封じの話をさせていただきました。
10/8の日経新聞にて報道された配当所得の税制変更も、所得税の抜け穴封じの一つです。
【封じられる配当節税】 上場オーナー、一部税増額も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC207WB0Q2A620C2000000
今回はこちらを解説していきます。
【概要】
通常、個人投資家が株式を保有していた場合、配当金には20.315%の税金がかかります。
しかし、上場企業のオーナー等の持株割合3%以上の
大株主は総合課税です。
オーナーは総合課税を避けるため、資産管理会社に大半の株式を保有させて、個人の保有割合を3%未満に抑えて総合課税を逃れていましたが、それが封じられることになります。
今後、上場企業オーナーはどのような動きをすることになるのでしょうか。
【封じられることになった上場オーナーの「配当節税」とは】
通常、投資家の保有している株式から得られる「配当に係る税率」は、20.315%です。
しかし、持株比率が3%以上の株主の場合、株式から
得られる配当にかかる税金は総合課税となります。
そのため、上場企業オーナーの配当所得は総合課税となるのですが、上場企業オーナーの資産管理会社が株式を保有することにより、オーナー個人の持株割合を3%未満に抑え、税率を20.315%に抑えるという方法がありました。
日経新聞ではこの方法を「配当節税」と呼んでいました。22年度の税制改正に伴い、この「配当節税」が使えなくなります。
【資産管理会社を使えば更なる節税が可能に】
資産管理会社が株式を保有することにより、個人で受け取っていた配当収入は、資産管理会社が得ることになります。
そのため、配当収入には法人税がかかると思いきや、
資産管理会社が上場企業の株式の1/3超を保有していれば、ほぼ全額を税金を払わずに受け取ることができるのです。
これは「受取配当等の益金不算入制度」(細かな適用条件の説明は省略します)というものです。配当の税金を払わずに資産管理会社で受け取り、資産管理会社でうまくやりくりすれば、実質的に無税で配当収入を得ることができるようになる、というわけです。
【「配当節税」はこれで解決なのか】
これで「配当節税」は解決なのかと言われると、まだまだそうでは無いのではないかと思っています。なぜなら今回封じられたのは、持株比率3%未満の個人株主でも資産管理会社と合わせて持株比率が3%以上であれば、個人が受け取る配当が総合課税になる、という点のみだからです。
つまり、資産管理会社の「受取配当等の益金不算入制度」はそのまま残ります。
【今後の上場企業オーナー/税制の動きはどうなる?】
今後の上場企業オーナーの動きとして想定されるのが、上場企業オーナーが個人から資産管理会社にすべての
株式を移すことにより、総合課税を回避する、ということです。
資産管理会社は依然として「受取配当等の益金不算入制度」を使えますので、すべての株式を資産管理会社に移してしまえば節税効果は何ら変わりません。
そのため、今後税制の動きとして想定されるのは、例えば上場企業オーナーの資産管理会社については「受取配当等の益金不算入制度」の対象外とする、であったり、資産管理会社が受けとった配当については個人に総合課税されるであったりといったような「配当節税」封じとなるでしょう。
いずれにせよ、課税と節税はいつの時代もいたちごっこです。一つ言えるのは「過度な節税は国税当局からの指摘を受けるリスクが上がる(脱税と指摘される)」ということです。いかなる取引も「取引の妥当性(節税を目的とした外観を有していないか)」を専門家としっかり検討したうえで実行することをお勧めします。
4. 金融コラム/ソフトバンクの猛攻
ソフトバンクをみれば、ベンチャー投資の傾向や世界観を理解することができると思っており、簡単に調べてみました。
世界的な景気減速により痛手を被っているソフトバンクグループですが、昨年にはビジョンファンドが、過去最高益約8兆円の利益を計上していました。
しかしながら、23年第1四半期の、ビジョンファンドの税引き前利益は、-2.3兆円の赤字です。
過去の利益チャートをみても、世界の市況に左右されていることがわかります。

現在、ビジョンファンド1号・2号とラテンアメリカファンドの3つのファンドで、437社に投資。合計投資コミットメント金額は1,622億ドル(約23兆円)と、
とんでもない投資会社になっています。

加えて上場株も保有しており、ポートフォリオ全体をみるとアリババ株21%が一番高い状況が続いていますね。

世界の金融プロフェッショナルを雇用しているソフトバンクは、アリババやTモバイル株式の売却により資金の健全化を図り、6月時点では、約340億ドル(約4.9兆円)を保有しています。
日本の外資系金融機関出身者がこぞって、ソフトバンクに転職したのを思い出しますね。一方で、去年から退職も相次ぎ、ソフトバンクの社長になるんじゃないかと、噂されていた、元ゴールドマンサックス証券副社長で、ソフトバンクグループの取締役副社長であったイケメンエリートの佐護氏も昨年退職しています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-05/QO6VDTT1UM0W01
そんな優秀な経営陣が運営するグループの財務状況ですが、来年7月に償還を迎える27億5000万ドルの永久劣後債を含めて、24年6月までに償還する全ての合計金額は約120億ドル(1.7兆円)になっています。
つまり、苦しい時期を迎えながらも、それ以上に現金を確保して、守備を固めている状況です。
おそらく、米国の利上げが落ち着いた頃にテクノロジー関連企業の業績が向上することを考えて、手元資金を貯めながら、新たな準備に入っているとも捉えることができます。つまり、ビジョンファンド3です。
かの有名な投資の神様ウォーレンバフェット氏の「周りが怖がっているときは貪欲に」を体現するかのような動きですね。
今後の動向にも注目ですね。
今週もよろしくお願いします。